千代誕生日記念 らーぜ×千代
「一年ってあっという間だよな」
練習が終わった後、いつものコンビニへ向かいながら呟いた阿部に、その他部員はぶはっと吹き出した。
「阿部年寄りみてー」
「うっせーな!だってあと一週間で4月だぜ?」
「確かにねー。そーいえば、巣山と花井4月生まれだっけ」
栄口に言われて、巣山と花井は『おー』と返事した。
とたんに『ケーキ!ケーキ!』と騒ぎ出す田島、水谷、三橋。
「で、そん次が5月の三橋でー…?」
突然自分の名が出た三橋は、ビクッとして固まった。
「6月栄口、7月が沖。田島が10月で泉は11月、それから確か阿部が12月で、水谷が1月、最後が俺、2月かな」
「西広すげ〜!」
「さすがだな…」
尊敬の眼差しを向けられ、西広は照れながら笑った。
「いや、だって毎回盛大にお祝いしたじゃん。三橋の誕生日会やってから」
「そういやーそーだったな」
「つっても、知るのはいつも当日だけどな、本人から聞かないかぎり」
「そーそー。いっつもしのーかが言う『おめでとう』で発覚すんだよね」
「うんうん、篠岡が…」
そこまで来て突然全員が黙った。
しかし、みんな考えていることは同じだった。
(((そういえば…)))
「しのーかのたんじょーびっていつだ?」
いつもながら空気が読めていない田島がみんなの疑問を代弁した。
「栄口、阿部!お前ら同中だろ!」
「うーん…そうだけど…」
「いや、俺中学一緒だったこと知らなかったし」
「んじゃ、花井は!?同じクラスだしキャプテンだろ!?」
「いや、関係ねーし!」
「うわ…花井…」
「ひでえ…」
「そういう意味じゃねぇ!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した野球部の仲間に、必死に話しかけようとする三橋。
しかしなかなか気づいてもらえずにいた。そんな彼の様子に最初に気づいたのは泉だった。
「…どうした、三橋?」
「…ぅお!あ、あ、の…あ、あした…」
「……明日?」
ブンブンと三橋は縦に首を振る。
少し考えてから泉はハッとした。
「しのーかの誕生日か!?」
「…っ!そ、うっ!」
話が通じて、三橋は嬉しそうに肯定した。三橋に代わって泉がみんなに伝える。
「おーい、しのーかの誕生日明日らしいぞ」
「…え、マジ!?…つーかよく知ってたな泉。」
「いや、俺じゃなくて、三橋が」
「へー!三橋が!」
みんなから褒められ、三橋はまたオドオドしながら呟いた。
「この前…カントク、と…篠岡、さんが…話して、た、よ!」
「そっかぁー!」
ニカッと笑った田島が、三橋の背中をバシッと叩いた。とたんにむせる三橋。
そんな彼を残したまま、西浦野球部員は、マネージャー、篠岡千代への贈り物について話し合い始めた。
次の日。
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