「ねぇ、本田!」
「あ?な、なんだよ?」
突然呼びかけられ、薫に見とれていた吾郎はドキリとした。
「あのさ…」
少し戸惑いながら言う薫に、吾郎は首を傾げた。
「なんかさ、思い出に残る物、作らない?」
「思い出に…残る物?」
「うん。」
薫はニコッと笑った。
「へぇ〜!これが『ぷりくら』か!」
ここについた時のようにはしゃぐ吾郎に、薫は苦笑をもらす。
「本田、初めてなのか?」
「おう。」
『初めて』プリクラをとるのが自分であったことが、薫は嬉しかった。
「おい、何ひとりでニヤニヤしてんだよ。」
「ぅえっ!?」
「そんなに俺とプリクラとれんの、嬉しいのかよ〜?」
意地悪なニヤニヤ顔で薫を覗き込む。
「んなわけないだろ!?お前の方こそ嬉しいくせに!」
「ああ?」
と、いつもの痴話喧嘩が始まるが、2人は笑顔だ。
『はい、チーズ!』
パシャッ
「おぉ!すげー!」
「ほら、例えばこのフレームを…」
「ぅお!お前天才だな!」
またしてもはしゃぐ吾郎。『あはは…』と薫は呆れて笑った。
「できた!ほら、本田!」
「うわ!すげーな、こんなんできるんだ!」
「ちょっと待ってね。これをこうして…」
薫は近くにあったハサミでプリクラを2人分に切り分ける。
「はい!」
ニッコリ笑って薫が差し出したプリクラを、吾郎が少し照れくさそうに受け取る。
「サンキュー。」
そして、薫は駆け出した。
「よーし!じゃあ、次はあれ(ジェットコースター)行こ!」
「えぇっ!?マジかよ!」
明るい青空が、2人を見守っていた。
「おい薫、何見てんだ?」
「あ、吾郎…!これ見てたの。」
そう言って、薫は自分の財布を差し出す。
「げ!これ…!まだ持ってたのかよ!」
そこには、いつかのプリクラが。
「当たり前だろ〜?あたしの宝物なんだから!」
そういった彼女は、あの日と何も変わらない笑顔だった。
二人の記念日
(てか、吾郎だって財布に貼ってるくせに!)
(なっ…なんで知ってんだよ、お前!)
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