〜”おとさん”〜
もうすぐ春がやってくる…
今年こそホーネッツをワールドチャンピオンに…その思いただ一つでスプリングトレーニングを送ってきた…今年は寿が加わり、ワッツが監督になってチームも変わろうとしていた。
そんな時……
「ただいまー…。」
・・・・・・
「んだよ…いないのかぁ〜薫!」
・・・・・・
叫んでも返事がない……
「ったく、しょーがねーな…。」
そう呟いて家に上がった瞬間……
プルプルプル…
電話が部屋に鳴り響いた……
「誰だよ……。」
めんどくせぇ……そんな気分に包まれていた俺は受話器を取った。
「Hello?」
「あ、兄貴っすか?」
「おぉ大河、久しぶりだな!」
相手は俺の義理の弟となった大河だった。
「なんでお前がアメリカに?」
「兄貴、今からちょっと病院に来てもらえませんか?」
「病院!?」
「えぇ…場所はインディアナポリスの…。」
「ちょ、ちょっと待てよ!!薫はどうしたんだよ!?」
「心配いりません、姉貴もこっちにいますから。」
「は、はぁ…?」
俺は何がなんだかよくわからず、とりあえず大河に病院の位置を教えてもらってすぐに向かった。
インディアナポリス内病院〜〜
「あ、兄貴こっちっす!」
「おい大河!どういうことだよこれ説明しろ!」
「あ〜そっか、兄貴は知らなかったんでしたね。」
「な、何がだよ!?」
大河はすぐに納得して俺をニヤリと笑いながら見つめてきて……
「姉貴、おめでたですよ。」
「…………。」
おめ……でた?
「な…何だよそれ…!?」
「兄貴…おめでたも知らないんすか?」
やれやれという口調で話した大河……
「じゃあこれでわかるでしょ……兄貴は、”おとさん”になるんですよ。」
「えっ………。」
俺は……頭が真っ白になった。大河が…何でおとさんなんて言葉知ってるんだ…?
「姉貴が言ってたんですよ。『吾郎には”おとさん”って言葉を言ってあげたら理解する』ってね。」
「か、薫が…!?」
「まぁとりあえず伝えましたから…後はよろしく頼みますよ。」
ポンと大河に肩を叩かれ、俺は病室へと案内された。
ガラッ!
「吾郎……///」
「薫……。」
病室のベットで横になっている薫…頬が赤くなって嬉しそうな笑みを浮かべている。
「………。」
じっと自分の腹を見ている薫……
「おい……大河から聞いたんだけどよ…。」
「……夢じゃないよ?///」
「えっ…?」
「これは夢じゃない…まぎれもなく現実、あたしたちに授かった”宝物”だよ。///」
「薫……。」
「……吾郎…おとさんになるね……///」
初めて薫の口から”おとさん”の言葉が耳に飛び込んできた…俺はただただ口が開いたまま言葉が出せない……
「……吾郎……///」
「…へっ、そうか。」
やっと実感が湧いてきた…俺は薫の腹を優しく摩る…
「俺…おとさんになるのか…。」
「うん……///」
「……頑張るからな、お前の分も…。」
芽生えた小さな命に問いかけ……
「……薫の分もな。」
「ありがと……吾郎。///」
優しく笑みを浮かべる薫の額に…俺は思わず…
そっとキスをした……
end♪
← →