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真っ赤な


「さむっ……。」

季節は10月…夏から秋へと変わりつつあるこの時期…
一ヶ月前までは半袖でも暑いし、汗も止まらなかった毎日が嘘みたい…綾音はそう思っていた。

「キャッ…!」

一気に涼しくなった秋風に髪が乱れ、制服を着ていても肌寒さを感じる…

「は、早く学校に行こっ…!」

これ以上髪が乱れては…そう思った綾音は急ぎ足で学校へと向かった。



1−A組教室〜

「おはよ〜綾音!」

「あ、おはよ〜!」

いつもどおり教室で友達と挨拶を交わし、自分の席に腰を下ろす綾音。

「あ、清水くんおはよう!」

「………。」

隣の席の大河はいつもと様子がおかしい…
普段なら素っ気なくても「おはよ」とか「どーも」とか…何かしら返事をしている大河だが、今日は綾音の顔をじっと見たまま何も言わない。

「え、あたしの顔に何か付いてる…?」

「………プッ。」

「!?」

何を思ったのか、大河は急に口を押さえて笑い始める。

「アハハ。」

「な、何が可笑しいの清水くん!?」

当然綾音はこう言いたくなる。すると大河は悪戯した子供のような目で綾音を見つめ…

「なにその頭?えらいことになってるけど?」

「え、頭!?」

綾音は慌ててカバンから鏡をとって自分の頭…つまり髪の乱れ具合を目にした。

「えぇ〜何これ〜!?」

朝家でしっかり整えた髪の毛も、さっきの登校中に風で乱れてしまい、ボサボサになっていた。

「まるで妖怪みたいだけど。」

「もぉ〜見ないでよぉ!///」

綾音は一気に頬を赤くし、慌てて髪を整えなおす。

「(あぁ〜今日は最悪なんだからぁ〜!)」

その時だった…

「ちょっとじっとしてて。」

「え…?」

大河は急に立ち上がり、何を思ったのか綾音の髪を触りだし…

「………///」

「こんなものが付いてたけど?」

大河が持っていたのは……真っ赤な紅葉だった。

「紅葉…?」

「……赤い。」

「え…?」

大河は小さな紅葉を綾音の顔の傍に当て、小さく呟く。

「マネージャーの顔、この紅葉ぐらい赤いけど?」

「〜〜〜〜〜〜////」

カァ〜ッと頬が赤くなる綾音…してやったりの表情を浮かべる大河…
ガラッ!

「あ…!」

クラスメイトが窓を開けた瞬間また秋風が吹き、大河の右手から小さな紅葉が舞い上がる…

「……秋だね、清水くん。」

「……秋ねぇ。」

この時期だから見れる風物詩……
だから”秋”は大好き…
綾音は改めて自分の気持ちに気付くのだった…。



end♪