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泣き場所


少し未来。20歳くらい?

大→綾→?




鳴り響く携帯。ディスプレイにうつった名前に、鼓動が高鳴るのがわかった。





聖秀を卒業してから何年経つのだろう。にもかかわらず、俺は彼女とちょこちょこと連絡を取り合っては、2ヶ月に一回くらいは会っていた。
想いを伝えようとするも、今更なんだか恥ずかしく、ここまでズルズルと引きずってきてしまった。
しかし、彼女も自分と会った時は本当に楽しそうに見える。
自惚れてもいいんじゃないか、と思っていた。


しかし、今回の彼女は様子が違っていた。

「…どしたの」

泣き腫らして真っ赤になった目とひどい顔の彼女を見て、俺は言った。

「……かみ」

「は、」

「…髪、切って」

その言葉で、彼女に何があったのかを悟り、それと同時に自分が失恋していた事を知った。

とりあえず彼女をカット用の店の椅子に座らせる。

「……いいの?」

「いいの」

「…そんな顔には見えないけど」

俯いて口をキュッと結んだ彼女の目からは、今にも涙がこぼれそうだった。

「………なんで…?清水くん、あんなに切りたがってたじゃない」

「それを言ったら、鈴木だって嫌がってたじゃん、髪切るの」

何度かあった美容師の大会で俺は鈴木にモデルを頼んだ。
彼女が髪を短く切るのを許してくれたのは、その時だけだった。
あれからまた少しずつ伸びた彼女の美しい黒髪は、ちょうど青春時代を共にすごしたあの頃と同じくらいになっていた。

「……いいの。これで全部忘れて、バイバイする」

「……切ったら、忘れられんの?」

「………」

「忘れたいの?」

「……っ、…」

定休日で貸し切り状態の店はやけに静かだった。

「…別に本当にアンタが切って欲しいなら切るけどさ、無理することないじゃんあんなの……ただの迷信だし」

「………」

「もったいないじゃん、髪も、……その人への気持ちも」

あぁ、何やってんだろ、俺…
自分で自分を追い詰めてってる気がする…
俺が泣きたくなってきた。

それでも、彼女には笑っていて欲しいから
優しく彼女の頭に手を置き、ポンポンと撫でてみた。

「元気、だせよ」

すると彼女は一瞬キョトンとしたあと、再びポロポロと泣き出した。


笑ってほしかったのに、結局泣いてるし。

…まぁいっか。

彼女がおもいっきり泣けるなら、俺が『泣き場所』になってやろう。

そう思って、震える小さな体を優しく抱きしめた。










END





実は綾音ちゃんの好きな人とは大河のことです。
知らない女の子(薫の友達)と仲良く歩いてるのをみて彼女がいるのだと勘違いしただけ。
『そんな彼にいつまでも頼っているわけにはいかない。』
失恋したら髪を切る&髪を短くすれば大河に会う回数も減るだろう。
ということでうえのやり取りに(笑)
無駄に細かい無理矢理設定ですみません…
やっぱり片想いは…苦手だ