とある昼下がり。いつものようにベンチに座り、アイマスクを付けて巡回という名のサボリをしていた沖田のもとに、一人の少女がやってきた。
その少女は沖田の座っているベンチにちょこんと腰掛けた。
いつもみたく殴り掛かってくると思い、身構えていた沖田はふっと息をついた。
(別人か?)
そう思い、彼はアイマスクをずらし、目だけをそちらに向ける。
しかし、そこには彼が思った通りの少女が座っていた。
「…てめーが静かなんて気持ち悪ィな。」
「………」
「なんか用かィ?」
「………」
俯いて黙っている神楽。傘で隠れてその表情は伺えない。
沖田はチッと舌打ちをして、腕と足を組んで座り直した。
最近、前よりも神楽と話す機会が増えた。
それでも、これまで女性と普通に話す機会などなかった沖田は、まだ彼女との『普通の』接し方がよくわからなかった。
神楽の様子がおかしい──それは見ればわかることなのに、どうやって話しかけてやればいいのか…
沖田はどうする事も出来ないまま、じっと黙り、神楽の口が開くのを待つ。
…………つもりだったのだが。
「…オイ、チャイナ。」
沖田は強引に彼女の傘をずらし、顔を覗き込んだ。
「なんかあるんならさっさと話せ。俺だって暇じゃ……」
神楽の顔をみた瞬間、沖田は口をつぐんだ。
彼女の瞳には涙が溜まっており、今にもこぼれそうだった。
「お前…何泣いてんでィ」
「…泣いてねーヨ!」
「泣く寸前だろーが」
「………」
(…六角屋ん時も一応世話んなったし)
(なんかコイツ変だし)
(たまにゃ、休戦も悪かねーか)
そう思い、沖田はため息を小さくこぼした。
「なんか…あったのか」
神楽の頭にそっと手を置いて沖田はそう問う。
すると神楽は驚いて沖田をみた。真剣な彼の瞳をみた瞬間、彼女の目から涙がこぼれ落ち、小さな嗚咽がもれた。
かと思うと、わっと泣き出し、目や鼻や口から、色んな液体が出てきた。
(慰めるつもりだったのに…逆効果だったか?やっぱわかんねぇな、コイツ…)
泣き出した神楽に呆然としていた沖田だったが、慌てて首のスカーフを外した。
(コイツに自分で洗濯させよ)
神楽の涙と鼻水と涎だらけになるであろう自分のスカーフを想像して、沖田は苦笑しながら神楽にそれを渡した。
END
微妙な終わり方すみません。
たまには泣き虫神楽ちゃんもいっかなぁと。
原因は…また機会があれば…。
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