(11/75)page二人の日常
「ほ、本田!」
『あ?清水じゃねーか。どうした?』
帰り支度をしていた吾郎は声をかけてきた幼なじみを見つけ、手を止めた。
「あ、あのさ…」
なんだか歯切れがわるく、もじもじする薫に、吾郎は眉をひそめた。
『…?おい、トイレなら黙っていけよ』
「違うし!だから…その、」
『なんだよお前らしくねぇな』
「こ、ここにさ、あんたが前から行きたいって言ってたバッティングセンターのコインがあるんだけど…」
そういう薫の持つ袋には、三十枚ほどのコインが。
『うぉ!何、くれんのか!?』
「え…
…う、うん…」
『サンキュー!』
そう言って袋を受け取った吾郎だったが、薫の表情が曇ったのを見逃さなかった。
そして薫と袋を交互に見比べ、袋から半分ほどコインを出したかと思うと、袋を薫に返した。
「え…」
『ったく、一緒に行きたいなら行きたいって素直に言えよな』
吾郎の言葉に、薫はすぐに頬を染めた。
「だ、だれがあんたなんかと…!」
『ハイハイ、わかったわかった。』
「…むかつく…」
軽口を叩きながらも、仲良くバッティングセンターへ向かう二人であった。
END
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