ドアを開けると、いい香りが立ち込めていた。
それと同時に聞こえる悲鳴。
慌てて居間に行くと、愛しい妻の姿が。
「あ、お帰りなさい!」
「…なんか、スゲー音してたけど…平気?」
「え…あ、う、うん!大丈夫…」
「…には見えないけど」
床に散らばった洗濯物や雑誌を見て、大河は呟いた。
「ちょっと…転んじゃって…」
そう言って綾音は立ち上がり、散乱したものを拾う。
「今、ご飯の用意するね」
「ん。…シチュー?」
「そうだよー」
大河はひとまず自室に戻り、荷物を置き、洋服を着替えた。
結婚式をしてから、二週間。
ようやく二人での生活にも慣れてきた。
最初は危なっかしかった綾音の料理もだんだん落ち着いていき、腕も少しずつ上がっていた。
「…お待たせー」
「あ、大河くん。ご飯できてるよ」
テーブルに大河が目をやると、おいしそうなシチューとサラダ、魚のムニエル、それにフランスパンがならんでいた。
「おー!うまそーじゃん!」
「えへへ…ちょっと今日は気合いを入れてつくってみました」
「へぇー…よし、食おうぜ」
「うん!」
『いただきます』と、手を合わせ、大河は即座に料理を口に運ぶ。
「おいしい」
結婚する前にはなかなか言えなかった素直な言葉も、今ではスッと出てくるようになった。
『よかった』と、綾音は顔を綻ばせる。
「雑誌みたよ。『イケメン美容師』って載ってた」
「あー…そう?」
「またファンが増えるね」
少し怒ったような拗ねたような言い方に、大河はニヤリと笑った。
「何、妬いてんの?」
「なっ…ちっ、違います!」
真っ赤になって否定する綾音に、クスクスと笑いながら大河は言った。
「別に関係ねーよ。俺、アンタ以外の女には興味ないし」
「……っ!」
大河の言葉に、綾音の顔はさらに赤く染まった。
(もう…大河くんったら…)
「ごちそうさま」
「あ、はい。そこに置いてて。後で洗うから。大河くん、お風呂入って来たら?」
「了ー解。あ、綾音も一緒に…」
「入りません!」
再び真っ赤になった綾音をケラケラ笑いながら、大河は風呂場へと消えた。
そんな彼を見送り、綾音は顔を赤くしたまま顔を伏せた。
(やっぱり大河くんに振り回されてるなぁ…)
出会ったあの頃と変わった事もあったが、変わらない事もたくさんあった。
だが、間違いなく、二人は互いに幸せだと感じていた。
おかえり sweet home
帰る場所 愛をありがとうきょきょ様、お待たせしました!
新婚でラブラブな大綾を目指して書いてみました。
大河君は付き合い出した瞬間に大胆になったり我が儘言い出したりするイメージがあります。
もちろん、愛故にですが。
タイトルと最後の言葉は絢香の『おかえり』からです。
リクエストありがとうございましたw
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