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不器用少年


思い切り打ち返されたボールは、彼が伸ばした手に当たり、そのまま地面を転がった。

周りが息を呑む気配がした。


「清水君!!」


彼はそのまま、グラウンドでうずくまり、右手を庇う。


恐ろしい光景に、私の思考回路は停止する。


「…ゃねちゃん…、綾音ちゃん!」


先輩の声でハッとする。


「冷やす物と何か布お願い!」

「は、はい…!」


私は慌ててクーラーボックスから保冷剤を出す。

他の先輩達に囲まれながら、清水君はゆっくりこっちへ向かってきた。

目が、合う。

すると、彼は少し笑って言った。

「なんつー顔してんだよ」

「え…」

目頭が熱くなってくる。
景色が滲む。
清水君は、そっと私の頭の上に手を置き、ポンポンと撫でた。

「アンタって、本当にバカだな」

「な、そ…」

『そんな言い方しなくたっていいでしょー!?』と言おうとして、
『俺は、』と遮られた。




「俺は大丈夫だから、心配すんなよ」







私は目に溜まった涙を拭った。

(バカは清水君のほうでしょ)

本当は痛いくせに、心配させないように無理して笑って…




私はそっと清水君の手を冷やしながら、彼に言った。

「すごくかっこよかったよ、清水君!」

そう言うと、彼は一瞬驚いた顔をして、照れくさそうに笑った。



不器用少年