「えぇっ!綾音、携帯買ったの?」
聖秀高校一年二組の教室で、ひとりの女生徒が声を上げた。
周りの視線が自分に集まるのを感じ、綾音は顔を赤らめてうつむいた。
「ゆ、由美ちゃん!声おっきいよ〜!」
「だって!あの変に真面目な綾音が携帯って、ビックリしちゃって…でも…」
『やっと買ったんだね!』と、姉のように由美に言われ、綾音は嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになった。
「ほ、ほら、もうすぐ先生くるよ!」
「え?あ、ホントだ!」
『またあとでアドレス登録してあげるねー!』と、言いながら由美は自分のクラスへ戻っていった。
(…私が携帯っておかしいのかな…)
綾音は自分の席に座り直し、桃色の携帯を見つめ、ため息をついた。
すると突然、綾音の手から携帯がヒョイと取り上げられた。
「…!清水君!」
大河は綾音の携帯をおもむろに開くと、ポチポチといじり始めた。
(まだ誰にも見せてないのに…!)
「清水君!返して!」
「やだ。」
画面から目を離さずに即答される。綾音は再びため息をついた。
「清水君、」
「まだ。」
「先生来ちゃうよ!」
「もうちょい。」
「もう…」
少しすると、大河は綾音に『ん。』と携帯を渡した。
「何したの?」
綾音は不安げに聞いた。
「別に…はい。」
「???」
わけがわからないまま、携帯を開き、画面を見た瞬間綾音は目を見開いた。
そして、画面と、顔を赤らめて自分に背を向けている大河を交互にみて、微笑んだ。
そこには、アドレス帳の一番に登録された、『清水大河』の名前があった。
アナタはワタシのNo.1
(ありがと、清水君!)
(…別に。部活の連絡するのが楽だと思っただけだから…)
(今日、メールするね!)
(ま、勝手にすれば?)
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