あいつのために嘘をつけ | ナノ



騙すことが好きなんじゃない。

「やぁーぎゅ」
「…何ですか仁王くん」
「んなあからさまに嫌そーな顔せんでもええじゃろー」
「嫌な予感がするからです。で、今回は何ですか?古文のノートなら貸しま――」

「――お前さん、まだ俺のウィッグ持っとる?」

面白い顔を見るのが、好きなだけ。


――03.


後輩がラーメンラーメン煩い部活後。紛れて、他に聞こえないように。

「……持ってますが、まさか」
「おん。来週…そうだな、火曜の3限、屋上な」
「――は?練習試合ではなく?」
「おーん。あ、赤也俺塩がいいー」

意味がわからない、と口には出さずとも顔が言ってる。こんな、全くもって紳士じゃない姿をあいつは知っているだろうか。

「では一体何故」
「えーからえーから。あ、柳生の授業は俺が出ちゃるき」
「…本気ですか、?」
「え、ナニ不安?大丈夫じゃって。5回くらい手ぇあげりゃーええんじゃろ?」

本気で首を傾げる柳生に確信。
きっと、面白くなる。
予想、予感、そして勘。よくなきゃ詐欺師なんてやってられない。

「そういうことではなく、」
「ま、楽しみんしゃい!あ、もちろんフル装備で行きんしゃいねー」

だって、あの時あいつが見せた、

「……まったく、君という人は」
「またまたぁ、案外楽しみなクセに。――赤也ぁ先輩置いてくなー」

あの熱っぽい顔に、嘘はなかったのだから。

ローファーに足をかける。心なしかかばんが軽い気がした。




――03.遊んでない
(まだ。…なんちゃって)


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