あいつのために嘘をつけ | ナノ



なんか、もやもやする

「…………ふぅ、」

でも

「っ、あーーーーーッ!!!!」

「おうおうおうおう、荒れとるのぅ」

それすら認めたくない、なんとなく。


――02.


屋上。陰をつくるレンガの壁は、ちょうどよく冷えていて気持ちがいい。

「…いたの」
「きたの」

隣にもたれたこいつも常連。隣のクラスの仁王雅治。

「…ない」
「いやんセクハラ」
「箱すらないし。何、禁煙?」
「そ。夏近いし、幸村の視線も痛くての」

一緒にいて何をするでもなく寝たり、音楽を聴いたり。何より、視線が交わらない、機嫌を伺う必要のない会話は楽だ。

「え、ばれてるの?」
「多分なー。鋭いきに」
「へぇ」
「柳生にはばれとるしの。あいつもなかなかにうざい」
「――――、柳生、?」

持ってないならしょうがないと自分のポケットに伸ばした手が固まる。気づいて伸ばして、取り出して。

「なん、持っとんのかい」
「だって仁王のがおいしい」
「買えば」
「高い」
「ふざけんな」

軽い蹴りを避けるフリでため息。よかった、気づかれて

「で、――…柳生、?」

「………ほんっと、性格悪いあんた…」

ないわけないんだ、コイツ相手に。

うなだれた頭の上で、楽しそうに空気が揺れた。




吸って、深く、吐いて。白い煙を全部出し切ってから。

「…階段から落ちそうになったのを、助けてもらってね?」
「柳生に?」

指の間で育っていく灰。

「うん、それで…柄にもなく、男、なんだなぁと、ね?」
「おん」

ちりちりと、ゆっくりと。

「…………、」
「……………」

育っている。認めようじゃないか、

「……ときめい、ちゃったんだよねぇ…」
「ははっ、大変じゃのー」

この、なんとも微妙な、感情を。

広がる煙に、盛大なため息を混ぜた。


認めてしまえば楽になるなんて、よく言ったもんだ。

「あんた絶対大変だと思ってないでしょ」
「思っとる思っとる」

まったくもってその通り。もやもやなんてどこへやら。

「ていうかなんで柳生なのなんであのガリ勉眼鏡なの」
「ときめいたんじゃろ?」
「そうなんだよなんでときめいたんだろうあたしのときめき返せー!」

すっきりしすぎて、笑えてくる。

揺れる煙が吹き飛んでいく。
綺麗な青い空さえも、面白かった。



――02.気にしてない
(…往生際が悪いの!いいじゃん表面くらい!)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -