夢 | ナノ


別に


「あ、日吉」
「―――藤間か、」
「大変だね、毎週毎週」
「お互い様だろ」


会いたい、わけじゃない。


―――シーソーに跨がる前に


神奈川の図書館。寂れたその隅の白い角テーブル、いつもの場所にいつもの顔。


そう、こんな雨の日だった。


どうしても読みたい本があった。だが学校の図書館は休館日。小さいころの記憶を辿って着いた此処。


帰ろうとした、その時に


『……雨かぁ…』
『…………』
『…、うし!行ける!行く!行ってみせる!』
『ちょっと待て』


差し出した傘が、きっかけだったんだ。



「日吉?」
「、」
「どした?借りられてた?」
「いや、……ある」


連絡先も交換してない。返したいから、また来週ね。約束したのはその時だけだ。


それでも、こうして。


「ふーん?あたしもうこれ借りて帰る――――え、雨!?」
「知らなかったのか?傘は?」
「…………、」


学校の図書館だってほとんど開いてる。借りたい本だってだいたいはそこで事足りる。


「……馬鹿だな、お前は」

「ありがとう、ゴザイマス」


それでも、こうして。


俯いて赤くなる顔が面白くて、見えないように笑った。


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