mha dream | ナノ


▼ Happy birthday and take care!

「大丈夫か?寒くねぇか?」
「うん……大丈夫……」
「そうか。喉乾いてねぇか?」
「大丈夫だよ…気にしないで、行ってらっしゃい」
「あぁ、行ってくる…」

バタン、と閉まるドアと、同時に閉まるオートロック、訪れる静寂から目を逸らし、頭まで毛布を被った。

彼氏の誕生日に、風邪をひいた――。

一体どこでウイルスをもらってきたのか……
私にうつしたのであろう誰かを心の隅で恨む
今日は焦凍の誕生日、本当なら今更感のあるイルミネーションを見て、インスタ映えしそうなお洒落なお店でご飯を食べて……って、それはそれは楽しい楽しいおデートになる予定だった。
それが、私が風邪をひいたばっかりに…………
家にいてもうつしそうだし、デートは中止して焦凍には普段通り仕事に行ってもらった
(本当に申し訳ないし情けない……)
一人だと余計心細い。薬も飲んだし寝ていようと、熱い瞼を閉じた。

夢の世界に頭だけ浸かれば、浮かんでくる焦凍とのデート風景
風邪なんてひかなければ今頃こんな楽しいデートができたのかな……焦凍、折角休みとってくれてたのにな……
(名前……)
「焦凍……」
焦凍のひんやりとした手がおでこに添えられ、私の前髪をかきあげて……
目を閉じたまま受け入れれば、額に柔らかい感触を感じた
…………ん?感じた?
パチッと目を開くと、「お」とフリーズする焦凍
「悪ぃ、起こしちまったか?」
「えっ、いや、ううん、大丈…夫……?」
いや、
「いや、なんで!?えっ、仕事は?」
驚きのあまり跳ね起きてしまった。つい30分程前に見送ったばかりの彼氏が目の前にいる……
まさかまだ寝惚けてるんじゃないよね?それとも高熱で幻覚が……!?
「仕事?
仕事なら今日休み取ってるだろ」
当然とでも言わんばかりに答える焦凍
「えぇ!?行ったんじゃなかったの!?うつしたりしたらだめだし!」
「自分の彼女放っといて仕事してる方がだめだろ」
買い出し行ってきたんだ、ポカリ飲むか?と大きなレジ袋をガサガサとかき回す焦凍
その中には、私がしばらく動けないことを見越してか、たくさんの食糧や飲み物、果物やゼリーなどが入っていた
「俺が看病するから、何かあれば遠慮なく言え」
得意気に胸を張る焦凍
「ずっと側にいるからな、安心して休め」
そう言って再び私をベッドに寝かせる焦凍に
「っぅ、ぐすっ……ぅぅ……」
「……!!
おい、どうした……?そんな辛いのか?
冷やしてやるから、それともポカリ飲むか?」
「ごめ……っ、ごめんね、今日っ、誕生日なのに……うぅ……」
「……そうだな、今日は俺の誕生日だ」
だから、と、頬に手を添える焦凍
「一日中、側にいさせてくれ」
涙が伝う頬に優しく口付ける
「焦凍……」
「誕生日なんだから、泣いてないで笑顔見せてくれ」
ほら、お前の好きなプリンもあるぞ
でもこれはデザートだから、ちゃんと飯食って薬飲んでからな、と、袋を抱えて台所に消えていく焦凍
ポカリだけ持って戻って来ると、
「でも、お陰でデートとは別に今日は一日中一緒にいられるから、ちょっと得したな」
と微笑んだ
少しいたずらっぽいその顔で、休みなんてまた取ればいいから、と頭を撫でてくれた
「焦凍、」
「ん」
「誕生日おめでとう」
「……あぁ」
横になる私に覆いかぶさるように私を抱きしめた
「好きだ、名前」
「私も、大好き」



――数日後。
名前はただの風邪ではなくインフルエンザで、物の見事に焦凍にうつり、今度は名前が看病をすることになったのでした……。

(また延期だね)
(その分一緒にいられる時間増えるな)
(じゃあその分デートプランいっぱい考えよう)
(あぁ)
(……その前に休んでた分の仕事なんとかしなきゃね)
(お…………)

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