夜伽話(ドラマCD)後日談 中岡慎太郎 編 二日目――昨日の読み聞かせは、慎ちゃんだった。 六条御息所っていう人のお話。 慎ちゃんが怪談話をする感じで読むから、怖くなっちゃって思わず抱きついてしまった。 わたしが怖がっているのに気付いてからは、普通に読んでくれたけど。 でも正直に言うと、慎ちゃんが帰った後もちょっと怖くて、あまり眠れなかった。 朝餉を食べる為に大部屋に向かうと、また廊下で慎ちゃんとばったり出会った。 「おはよう、慎ちゃん」 「お、おはようっス。姉さん」 ん?あれ? 今日もまた大きな隈作ってる。 「どうしたの、慎ちゃん?今日も眠れなかったの?」 「あ、いえ……そういう訳では」 「わかった!慎ちゃん、わたしに怖い話したけど、自分が怖くなって眠れなくなったんでしょ!」 「そ、それは誤解っス!」 慌てた様子で首をブンブンと横に振る慎ちゃん。 「昨日、御息所の話を読んだら、姉さんちょっとだけ泣いちゃったでしょう?それで、武市さんに昨日遅くまで説教されて……」 「お、怒られてたの?」 「はいっス……」 慎ちゃんは眠そうに目を擦る。 それから目をぱっちりと開くと、深々と頭を下げてきた。 「ちょっとふざけが過ぎて、姉さんを泣かせてしまった事、許してほしいっス」 「え!?そ、そんなに謝らないで!子供じゃないのに怪談話で泣いたなんて、わたしも恥ずかしいし……」 「姉さんは、女子っスから。怖くて泣いてしまうのは仕方ないっス!」 そう言って、慎ちゃんはにこっと笑うと、それに、と付け足した。 「泣いてしまって、おれに抱きついてきた時の姉さん、とっても可愛かったっス!」 「え!?」 可愛いと言われて、つい顔が熱くなってしまう。 赤くなった顔を隠すように下を向いた後、そっと慎ちゃんを盗み見ると。 慎ちゃんの後ろに、武市さんが立っていた。 「抱きついた、とはどういう事だ、中岡」 「っ!武市さん!!」 「僕は昨夜、そんな話は聞いていないぞ。朝餉の前に、少しそこの所を詳しく聞かせてもらおうか」 「ね、姉さん!助けてくださいっスー!!」 「女子に助けを求めるとは、みっともないとは思わんか、中岡?」 言いながら、武市さんは慎ちゃんをズルズルと引き摺って行った。 また、説教が始まるのかなぁ。 最早、手を合わせる事しかわたしにできる事はなかった。 [続く] |