帝人→←杏里←正臣
「暑い、帝人、暑い」
「知ってるよ。ていうか、暑いって言うと余計暑く感じるから黙ってて」
真夏の昼間、じんじんと熱を持った机に頬を押しつけただ暑いとひたすら連呼をする己の親友正臣はどこか上の空のように細めた双眸で苛立たしくなる程に日差しの強い太陽へと視線を向けていた。一体眩しくないのだろうか、誰しもそんな事を思うだろう、なんてどうでも良い事を考えながら僕は正臣の普段使用している下敷きをうちわのように使い、己に風を宛てる。手を止めると蒸し暑さは増すばかり、思わず溜息が零れた。開けた窓から入る風は生暖かく涼しいと呼べるものでは無かった。ここまで暑いと勉強意欲もどこかへ飛んでいってしまいそうだ、机に突っ伏す正臣の上に寄り掛かろうとした刹那
「竜ヶ峰くん、」
何処からか想い人の声が聞こえた。思わず何処だと辺りを慌てて見渡すと直ぐ近くで己を待つように立っているではないか、先程の声に反応をしたのか正臣は突っ伏していた姿から顔を上げていた。想い人に呼ばれた僕は勢い良く立ち上がりまた次の休み時間に来るから、と正臣に一言掛け想い人へと歩み寄り教室へと向かう、正臣の気なんて知らずに
(ずるい、嗚呼、帝人は本当ずるい。羨ましい…)
そして俺は再び熱を持った机に突っ伏した
2010.06.17