※死ネタ
※夢なのか疑問







 ごめんね、と啜り泣く声が聞こえた気がした。

 薄っすらと瞼を開くと、その場にへたりこみ、木の棒のようなものを掲げる少女が見えた。同時に、その棒の頂から光が放たれる。それを見て、私は少女が握っているのが癒しの杖だとわかった。しかし、私の体は少しも反応しない。どうやらもう手遅れのようだ。にもかかわらず、少女はやけを起こしたように何度も空へ杖をかざし、癒しの力を使い続ける。
 リズさん。少女を呼ぶ自分の声の弱々しさといったら思わず笑がこみ上げそうなほどだったが、幸いなことに彼女の耳には届いたようだ。悲痛な様子で私に治療を施し続けていた彼女は、目を見開いて私の顔に食い入った。晴天の代わりに、彼女の顔が私の視界を埋めた。
 彼女は私に向かって何か言っているようだったが、私には何も聞こえなかった。手を。その言葉を口に出していたのか心の中で呟いただけだったのかも最早わからない。私は視線はぼーっと彼女の顔に向けたままで、指先だけで求めるものを探す。
 少しずつ、少しずつ前に進んでいくと、不意に爪の先に柔らかいものが触れた。それを掴めなかった私は、つんつんといたずらするようにつつくだけだった。すると、私の手が温かいものに包まれた。カラン、と杖が投げ出された音がした。