「告白はロイ様からだったそうよ」
「そうなんだ」
「本人から聞いていないの?」
「そういう話はあまりしないよ」
 胡座をかきながら、弓をいじる手は止めないまま言うと、「ふーん」と興味なさそうな声が帰ってきた。
「てっきりリリーナ様がぐいぐい押したのかと思ってたけど、ロイ様って以外としっかりしてたのね」
「そうだね。少し驚いたよ」
「あんな鈍そうな方がねー」
 確かに彼は彼の父に比べ、色恋沙汰は苦手なようだった。幼なじみの公女ははたから見ても彼に好意を抱いているのが明らかなほどだったのだが、彼自身はそんなことを意にも介しておらず、やきもきさせられたものだった。それでもやはり彼も男だった、ということだろう。
 自分の中でそう結論づけたところで丁度弓の点検も終え、立ち上がった。婚儀から数日が経ち、今日から通常の訓練も再開されるのだ。
 そろそろ行こうか、とまだ坐っているナマエに声をかけようとしたところ、予想外に含むものがあるような視線が向けられた。
「……ねえウォルト、何か言うことはないの?」
「えっ、何が?」
「もういいわ、ウォルトのばか」
 そう吐き捨てると、立ち上がって訓練場のほうへ歩き出してしまった。豆鉄砲をくらったような気分でその背中を唖然として見つめる。自分はそんな罵倒を浴びせられるようなことをしただろうか……
 今までの一連の会話を想起して始めて、はっと気づいた。それと同時に、顔に熱が集まる。
 もし彼女の意図が自分の今している予想と一致するとしたら、それはもう、彼女自身が告げているも同然じゃないのか。
 ずいぶん先に行ってしまった彼女に何とか追いついて、恥ずかしさに口ごもりながらもそう意見すると、「女心がわかってない!」とまた罵られた。