ルカがマイセンの代わりに連れてきた子供たちは、アジトに着くまでの道のりですでにルカに随分懐いていた。 中でもナマエという少女はどうやら奴に惚れてしまっているらしい。よくルカの周りをうろちょろしては嬉しいんだか恥ずかしいんだか、複雑な表情で彼を見つめている。まったく、いじらしいものだ。
「――で、お前はどうなのよ」
「どう、と言われましても」
 彼女は大切な仲間の一人ですよ、というお行儀のいい回答を投げられ、パイソンは眉を顰める。 少しは口が軽くなるかと考え、乗り気でないルカを半ば無理矢理に街の酒場まで連れ出したものの期待外れの結果に終わり、思わずため息が出た。
「ま、美形ではあるけどまだガキだしなぁ。お前もさ、その気ないならあんま優しくしすぎるのもどーかと思うよ?」
「……わかっていますよ」
 その声に、パイソンはわずかな怒気を感じ取った。彼女の存在が煩わしいのか。それとも、珍しく感情の制御が利かない自分自身に苛立っているのか。
(もしくはしょーもないことでわざわざ連れ出した俺に怒ってる?)
 確かめようかとも思ったが、水呑をぐいと煽ったルカの深刻な面持ちに、それきりパイソンは口を噤むしかなかった。