▼日常≒非日常

 今日の池袋では、非日常ではなく日常が繰り広げられているようです。


「しっずっおーっ!」
「あ?」

 そこらに立っている標識を引き抜こうとしていた喧嘩人形こと静雄に、飛びつく少女が一人。
 この二人の関係は俗にいうカップルだ。そして、かなりラブラブである。静雄に関してはなまえを溺愛している程だ。

「なんだ、なまえか。どうした?」
「静雄とデートしたいなって思って来ちゃった。今仕事中だよね?」

 静の仕事を理解しているなまえは、今の現状を見て仕事中だと察する。空気だが、トムさんも近くにいる。
 静雄がトムさんにちらりと目を向けると、こくりとトムさんは頷く。これは、行ってきていいぞの合図となっている。
 静雄はトムさんにありがとうございます、と呟きなまえと街の中に消えていった。


「静雄とデートするの久しぶりだね。」
「最近は忙しかったからな。それになまえも定期テストがあったからな。」

 いい結果が期待できそうか、と静雄が問うと、なまえは大きく頷く。

「静雄と会える日のこと考えてすっごーく頑張ったから、大丈夫だよ」
「偉いじゃねぇか」

 ニカッと笑いながら、なまえの頭を少し乱暴にぐしゃぐしゃと撫でる。なまえもそれが嫌ではないようで、ニコッと笑う。
 そんな二人の円満な二人の時間を破り捨てるように、あの男が現れる。

「あ、シズちゃんとなまえじゃん。」
「手前、何で池袋にいるんだよ。」

 血管を浮きだしながら、静雄はなまえを庇うように、臨也の前に立ちはだかる。
 なまえは臨也が苦手だ。
 静雄が好きななまえにとっては、静雄にとってお世辞にもいい存在と言えない臨也を好きになれないと言う理由もあるが、他にもっと大きな理由がある。なまえが臨也を苦手とする理由はなまえ曰く、本心が見えないからだ。臨也が嘘の塊にしか見えないらしい。
 それ故、臨也を恐れていることを知っている静雄は庇うように立ちはだかっている。

「俺がどこにいようと、俺の勝手だろ?シズちゃんに口を出される謂れはないよ。」
「黙れ。俺達にとって手前は迷惑以外の何でもねえ。キレる前にどっか行け。」

 ぴりぴりとした空気のこの場面に、か細い声でなまえが言葉を発する。

「静雄…、向こう行こ?」
「あ、あぁ。」

 なまえがこの空気に耐えられなくなったことに気づいた静雄は、なまえの手を引き来た道へ引き返す。
 静雄はぎろりと臨也を睨みつけた。それに応えるように臨也は、なまえの嫌いな笑顔で微笑みかけた。


「家、行くか?」

 人通りの多い大通りに出ると、静雄はそう提案する。恐らく、この言葉には、絶対に臨也に会わないだとかなまえにとって害となる物をなくそうとする、静雄の優しさが含まれているんだろう。
 なまえは頷き、それを確認した静雄は、なまえと手を掴み家へと向かう――。





非日常が日常



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