―― ツリーの下で待ち合わせな。
そう言い別れたのは、つい先日のことだ。
世間はクリスマス一色で浮かれている。もちろん、彼氏…と言っていいのだろうか(いや、恋人の方が間違いがないだろうな)。恋人がいる俺も世間と一緒に浮かれてしまっている。
「待ち合わせ時間より一時間も早く来ちゃったよ」
失敗したな、と深いため息を一つ吐く。これじゃ、今日を楽しみにしていたのが、バレバレすぎる。男が男を待つんだから、もっと自然に…ただ男二人で遊んでるように見せなきゃいけなかったんだが。これじゃ、ホモカップルがばれてしまう。
今から一度家に帰るのもなんだし、側にあるファーストフード店で時間を潰すか。
「あ、」
ファーストフード店に行くと、そこには見覚えのある顔があった。今日、約束をしていた静雄がいた。
「し、静雄。仕事はもう終わったの?」
「ああ、今日は少なかったからな」
食うか、と静雄が食べていたポテトやらバーガーを差し出す。俺はまだ何も注文していなかったので、静雄に甘えてポテトを一つ口に運ぶ。
「名前も、今日はフリーだったのか?こんな早く来て…」
「あ、うん。まあそんな感じ…かな」
今日が楽しみ過ぎて一時間も早く着いてしまったなんて、恥ずかしくて口が裂けても言えない。
「この後、どうする?」
今日は集合場所しか決めていなかったので、静雄から俺の希望を質問される。が、特に何も考えてなかった(静雄と一緒にいれればそれでよかった)俺は、返答に困ってしまう。
「名前が特に行きたい場所ないなら、買い物して名前の部屋に行きたいんだけどいいか?」
「うん、いいよ」
そうと決まれば早く行こうと思い、二人で残っていたポテトを口に運ぶ。
食い終わって街に出ると、さっきよりもカップルが増えていた。
「クリスマスって凄いね…」
人々をここまで浮かれさせる事が出来るのか、と変なことに感心してみる。
「そういえばさ、買い物って何買いに行くの?」
「ついてからのお楽しみだ」
まあたいしたものじゃない、と付け加えられる。
隠されると気になって仕方なくなる俺を、静雄はきっとからかっているのだろう。普段ならむくれる所だが、今日は静雄も楽しそうだし、せっかくのクリスマスなんだから気にしないでおく。
「ほら、着いたぞ」
「……ケーキ屋さん?」
「名前は甘いもの好きだろ」
「静雄ありがとッ!」
つい嬉しくなった俺は静雄に抱き着いてしまい、公共の場所だとチョップされてしまった。静雄のチョップは冗談抜きで痛い。
「ほら、さっさとケーキ買って名前んちで食べるぞ」
ケーキ屋さんでの好奇の視線は少し痛かったが、仲良し男友達と勘違いしてくれたのか陰でこそこそと言われる事はなかった。
二人でどのケーキが言いなどといろいろ言い合った末、ケーキの上にサンタやトナカイなどが乗った可愛いチョコレートケーキを購入した。
「ありがとうございました」
クリスマスも寂しく働いてる定員に軽く会釈をし、ケーキ屋さんを後にした。
*
「ただいまー」
「お邪魔します」
俺ん家は狭い。小柄な俺一人で暮らすのには困らない程度の広さだ。だが静雄みたいな大柄な男にとっては物凄く狭い家だろう、間違いなく。
「早速だけど、ケーキ食べる?」
「ああ」
俺は台所に向かい包丁を手にとる。何等分しようか若干悩んだが、無難な大きさに切りお皿に乗せ紅茶を入れフォークを持ち静雄の元に向かう。
「お待たせー、このくらいでよかったかな?」
「ありがとう、大丈夫だ」
「じゃあ食べよう!」
ちょっと待て、と静雄がケーキにかぶりつこうとする俺を止める。
「俺がいいって言うまで、目つむれ」
何をされるのか期待しながら俺が素直に目を閉じると、ごそごそと静雄が何かを出し俺の元に歩いてくるのが分かった。
しばらくすると首にひんやりと冷たい感覚――と同時に、目を開けていいと合図される。
そっと目を開けて自分の首もとを見ると、そこにはシンプルなデザインのネックレスがかかっていた。
「俺からのクリスマスプレゼントだ」
「あ、ありがと…!でも俺静雄に何も用意してないよ」
「大丈夫だ、それは今夜頂く予定だから」
そっか、そうだね!と素直に言ってしまいそうになったが、冷静になってツッコミを入れる。
「いや、あの、それ違くね?」
「ん?何か言ったか?」
「あ、いえ。何でもないです」
ああ、このクリスマス色んな意味で大変なことになりそうだ。
絶対に逃がさない
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鶏さん、五万打&一周年記念企画へのリクありがとうございました!
執筆が遅くなってしまい、すみませんでした。
静雄と男主でイチャコラさせるのは久々だったので、とても楽しくやらせて頂きました。そして、終わらない気がしたので、危ない展開になる前に強制終了させました(^ω^)←
鶏さん、大好きです!!←
これからも仲良くしてやってくださいっ!
本当にありがとうございました。