心配事
お母さん。ねぇ、お母さん。
いつからあなたはお母さんになってしまったんだい?
私の記憶が間違っていなければあの頃は…
*
「しゅずやー!」
「しゅずやじゃなくて、錫也ね?」
「わかったよ、しゅずやー」
そう、それは私がまだ錫也のことをしゅずやと呼んでいた頃のことだ。
その頃は、私の世界には家族と錫也くらいしかいなくて。
私よりも幾つか年が上だった錫也は、毎日のように私と遊んでくれていた。
私はいつも遊んでくれる錫也が好きだし、錫也も私の事を妹のように可愛がってくれた。
「しゅずや、すきだおー」
「うん、俺もだよ。」
今思えば冗談だったのかもしれないが、何とも言えないラブラブ度ではないだろうか。
そう。ラブラブだったのだ。かつての私は錫也に本気で恋をしていた。彼を男の子としか見れない時期があったのだ。
それが今では…
「お母さん、お腹すいたよー」
「ちょっと待って。もうすぐで出来上がるから」
素敵に微笑みながらおにぎりを握っているのが、さっきの男の子だとは誰も思うまい。私だって、こんなことになるとは思ってもいなかった。
「はい、出来たよ」
ああ、今日もいい笑顔で。いつもこの笑顔が私を癒してくれる。(お母さん的な意味で!)
いつの間にか…
「……ただのお母さんになってしまった」
「ん?なまえ、今なんか言った?」
「いいえ、美味しいご飯をありがとうございます。大好きです、愛してます」
「うん、いくらなまえだからと言って、俺も男だからそういうこと言うのはやめようか」
お、お母さん。君は今、お父さんになろうとしてるんだね。感動したよ!っていうことは、これで異性と恋ができるよ!(今までの錫也は女の子だよね)(お母さん過ぎるよね)
「なまえさ、失礼なこと考えてたよね」
「…え?」
「うん、ばればれすぎだね」
「今ならまだ許してあげるよ。言ってごらん?」
お母さん。ねぇ、お母さん。
目だけが不自然だよ?笑ってないよ?顔だけ笑ったふりはだめだよ?
「お母さんがお父さんに…なる」
「誰のこと」
「しゅずや。」
「うん、錫也ね」
「すんまそん。」
「すみません、ね」
「ごめんよう」
「ごめんなさい、ね」
「ゲラゲラ」
「そこ笑う所じゃない…うん、もういいや」
(ゲラゲラって、笑ってるうちは彼氏出来ないだろうから、心配しなくて大丈夫そうだね。)
「…やっぱ好きだなあ」
錫也のこと。
いらぬ心配
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