▼ プロローグ
「琥春姉!私、星月学園に入学したい。」
「おいおい、星月学園は男子校だぞ?」
「琥太にぃは黙ってて!」
どこにでもあるような家庭で、姉に駄々をこねる妹が一人。そう、《妹》が一人。中学二年生の彼女が、高校を男子校に行きたいと言い出したのだ。
「うーん、そうね…。」
無茶を言う妹を咎める気も止める気もないようで、姉の琥春は、解決策を考える。「本気かよ。」と、呟く琥太郎を無視して、星月学園に行くべく妹、琥夏が提案する。
「いっそのこと、男女共学にしちゃう…とか?」
怪しい笑みを絵かべる琥夏を見つめ、姉も怪しく微笑む。
―― その手があったわね。と。
普通に考えれば、こんな個人の意見で学校の形式を変えることは出来ないだろう。だが、彼女――琥春にはそれが出来た。
そう、琥春は星月学園の理事長で、絶対的な権力及び決定権を持っているのだ。
「私もそろそろ女子生徒が欲しいと思ってたのよね。」
「おい、待てよ。そんな勝手に…いや、軽いノリで決めていいことじゃないだろ。」
「保健医くん、何か言った?」
理事長という立場を使い、星月学園で保健医を勤める弟を脅しにかける。そして、一言。琥太郎の未来のお嫁さんが入学してきたらどうしよう、と。
女子二人は、琥太郎の未来のお嫁さんはああだこうだと、勝手に話を進めている。
そんな自分の姉妹を見て、文句を言いながら、大変なことになりそうだ、とため息を吐いた。
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