※裏注意!
※父親×臨也の描写あり。






折原臨也は、人並みの幸せを与えられたことがなかった。少なくとも小学2年生から高校の今まで、両親に大切に扱われた記憶が臨也にはない。

まだ臨也が幼い頃、彼はその端整な顔立ちから近所の高校生に輪姦された。当時8歳だった。
幼すぎる体にその過去は重く、病院で目を覚ました時、臨也はそれを含めた殆どの記憶を失っていたのだ。

そのことがある以前まで、両親がどのように臨也に接していたのかは分からない。優しかったのかもしれないし、元々少し厳しい人達だったのかもしれない。ただ、臨也が強姦されてから両親の態度が急変したのは確かだっただろう。
 父親は汚れた臨也を汚いと罵り、暴力と性行為を強要するようになった。それを知っていながら母親は、知らない様振る舞い臨也を冷たい眼差しで見下した。
「汚い」は家での常用語となり、父親はいつもそう呟きながら腰を打ち付けていた。

汚いなら、抱かなければいいのに。独占欲の象徴のような所有痕なんて、残さなければいいのに。そんな言葉すら言えずに9年。臨也は、今日も実の父親に犯されている。


「ひ、ぃあっあ、んん」
「ちっ、汚ねぇ体使ってやってんだ。もっと締めろ、おらっ!」
「ひぎっい゛ぁあっああ゛あぁづ、あづいぃ! ひゃめ、あっア゛ッ」


ジュッという音と共に肉の焼けたような臭いが鼻をつく。煙草を押し付けられるのは初めてではなかったが、一度経験すれば慣れるというものでもない。赤く爛れた背中に、気持ちよさそうに吐息を吐く父親の手が重なった。


「いいぞ臨也……くっ」
「ひっ、ひぃ、ィ゛、あ゛あぁ……」


痛みからぎちりと締め付けた性器が程なくして絶頂を迎えると、臨也の体から力が抜けた。行為が終わってから意識が白んでいくのはいつものことで、今日変わらず抗えない眠気が臨也を襲う。

明日は学校だ。今のうちに出された精液を掻き出しておかなければいけないのに、臨也は欲望に忠実に、赤い瞳を目蓋の内側へと覆い隠していった。







* * *





臨也にとって学校は、一時的な救済所だった。
中学はともかくとして高校では割と楽しい学園生活が送れていたし、世話焼きな門田に中学時代唯一の友人だった新羅もいる。

何より平和島静雄と喧嘩まがいの殺し合いをする事が、臨也は大好きだった。そこではあの家のような窮屈感など欠片も感じない。身が風を切る音と、後ろから迫ってくる怒声と公共物が心地いいくらいに臨也の体の横を通り過ぎていく。臨也もそんな空間でのみ純粋に楽しみ、笑うことができていた。
 シズちゃん、とまるで馬鹿にしたような愛称を付け、所構わず静雄にちょっかいをかける臨也の何処に、静雄に対する嫌悪などあっただろう。


「あっ嫌だ! なんで…シズちゃん、嘘、やだッ放せよ!」
「っるせぇ! 手前が悪ぃんだろうが! 手前が……ッ」
「何をっ…ひっやだ、怖い、こわいからぁ……! やめ、」


そんな静雄にどういう訳か今、臨也は組み敷かれていた。
 理由なんて分からない。昨日の事もあって遅れて学校へやって来た臨也を静雄が無理矢理連れ出し、使われ無くなって久しい別棟の空き教室へと押し込んだのだ。むわりと広がった埃には気も止めず臨也を押し倒した静雄に、臨也の顔から余裕が消える。時は経てども記憶の中枢に根付いて離れない9年前の事件が、臨也を幼い頃へと戻させた。


「いやっ、いやぁ! 助け、だれか……ぁっんぐぅ!」
「黙れって、っ」


昔と同じ大きくてごつごつとした手が臨也の口を覆う。その手が迷うことなく臨也のインナーとズボンを脱がせた。


――学校、なのに……ここは、あの家とは違うのに。


昨日焼き付けられた煙草の痕が、心と一緒にじくりと痛んだ。室内が薄暗い所為か静雄は体中の傷跡の事は聞いてこない。ただ、首筋に顔を埋め何度もそこに口付ける様子が強く印象に残った。


「手前が、変な痕付けて学校来やがるから、」


静雄がこの行動に走った原因のような事を呟いても、半ばパニックに陥っている臨也の耳には届かない。必死に逃げようともがく臨也を牽制するかのように、静雄の性器が孔へと宛がわれた。瞬間、牽制に留まらなかった性器がずぷりと臨也の中に侵入する。


「―――――――…ア”ッ!?」
「っはぁ、何か手前……緩く、ね? 男に突っ込むのってこんな簡単なモンなのかよ」


挿入の衝撃で慄く臨也にもその言葉は届き、鋭い凶器となって身を突き刺した。
静雄は知らないだろうが臨也は先程まで昨日の残滓を掻き出していたのだ。そこが受け入れやすくなっているのは当然の事。けれどそれはまるで自分の汚さを彼に指摘されたようで、実の親に拒絶されるのとは比べ物にならない程の恐怖が臨也を襲った。


「んっ、ふぅぅ…うっ、ふぇ」
「ちっ………動くぞ」


両手で腰を掴み抽挿をし始めると、臨也はついに抵抗を止め父親にするように自ら腰を振った。せめて想い人の静雄には気持ちよくなって欲しいと思ったのだ。
 なるべく下腹に力を入れ、性器を締め付けようと努める。その慣れきった様子に静雄はまた舌を打ち当たるように腰を打ちつけた。


「ひぁあっあっああ!」
「手前は、分かってんのかよ…っ! 俺が……あ? んだこれ、火傷?」
「あっ! やだ、見るな、ぁ! 違っ、やだ」


ここで漸く静雄が臨也の火傷痕に気づき疑問の声を上げた。一つに気づくと後は芋づる式に至る所の傷にも気づく。明らかに自分が付けた物ではない傷跡。それが導き出す一つの答えにたどり着くまで、多くの時間は要さなかった。嫌だ違うんだと泣きじゃくる臨也はまるで幼い子供のようで、誰が見ても痛々しい。


「ばっ……か野郎! 何で言わねんだクソノミ虫!」
「ひっ――!」


小さな痩躯を震わせ、誰も想像できない程に酷使され続けた体が初めて、温かい体温に包まれた。
そして知らない温もりに怯んだ臨也の耳に、こんな行為中には決して向けられた事の無いゆったりとした低音が、響く。


「いいか、俺が言うのも何だがな、こんな傷付けるような奴とヤんじゃねぇよ」
「…………へ?」
「あークソっ、せめて新羅に傷くらい診てもらえ。そんなボロボロだから俺みたいな奴に襲われんだ」
「は……、ぁあぁあああ!? 何それ、俺の所為って言いたいわけ? 俺が悪いって、そう言いたいのかよ!」


今まで諦めに曇っていた臨也の瞳に久方ぶりの光が宿った。静雄の方から行為を強要しておいてこの言い分。ふざけるなと声を上げようとした臨也の中から萎えた静雄の性器が引き抜かれ、抗議は短い悲鳴と一緒に飲み込まれた。


「そうじゃなくて。誰か頼れって言ってんだ。俺はともかく、門田にだって何も言ってねんだろ?」
「……簡単に言ってくれるよね。こっちの気も知らないでさ」
「知らねぇから話せっつってんだよ。本当に馬鹿野郎か手前は」


さっさと自分の服装だけを整え臨也を見下すように静雄は立ち上がる。
少なくとも俺は聞いてやると、真正面から真剣に言ってのけた静雄に臨也は理由も分からず頬を朱に染めた。抱きしめられる温もりも力強い言葉も、向けられるのは初めてだった。


「その代わり、手前の話聞いたらこっちの話も聞いてもらうからな」


静雄の金髪がキラキラと日光に輝いて、埃を被った床も机も、廃れたような教室全体がまるで別物のように臨也の目に映る。
自分勝手だなぁと一つ溜息をついて臨也もふっと笑って見せた。


「まずはまぁ……アレだ。手前にその傷つけた奴ぶん殴るから場所教えろ」


臨也の新しい世界は、そんな言葉から始まった。







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不協和音様に提出させて頂きました! メールの件は大変ご迷惑をおかけしました。

素敵な企画をありがとうございます! これからも応援しております^^。


(20111221)
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