エイプリルフールとは?








三月三十一日。
恋人の五条くんと喧嘩した。
本当に許せない。人気で並ばなきゃ買えないギモーヴを、勝手に部屋に上がり込んだ挙句、全部食べた。

任務終わりの唯一の楽しみだったのに!
悪びれる様子もない彼にムカついて、それから口を聞いてない。


四月一日。
深夜に今日がエイプリルフールだと気づいて、悪戯に『もう別れよう』とメールしてみる。
流石にエイプリルフールの嘘だと気づくだろう。

しかし、ちょっとでもイラッとしてくれたらこちらとしてはやってやったぜ。くらいの気持ちだった。
すると、ドタドタと外から音がして何だ?と思っていると、ドアが蹴破られる。


「えぇっ!?」


そこには携帯を握りしめた悟がおり、ベッドにいる私に向かってくる。


「意味分かんねぇ!何でマシュマロで別れなきゃなんねーの!?」
「ギモーヴだし」
「どーでもいい!」


予想外の反応だった。
まさか、一日だって気づいてない?


「今日、四月一日だけど」
「はぁ?だから何だよ」
「エイプリルフール」
「だから何だよそれ!どーでもいい、別れたくない!」


まるで子供のように駄々を捏ねる彼に、私はもしかして、エイプリルフールを知らないのか?と驚いてしまう。


「マシュマロ買ってやるから、同じの。だから別れるなんて言うなよ……涼華と別れたくない、もっと美味いのも買ってやるから」


彼は私を抱きしめると、こんなに弱気な彼は初めて見た、とキュンとしてしまった。


「別れないよ。ごめんって……意地張りすぎた」
「泊まってっていい?」
「あー……うん……」


彼は扉を閉めると、私をベッドに押し倒してギューっと抱きしめた。


「エイプリルフールって、嘘とか冗談を言う日だよ」
「は?」
「知ってるかと思って、言ったんだけど……」
「どーでもいい文化。冗談でも言うなよ」


まさかこんなことになるなんて。
彼は私に抱きついたまま眠った。

馬鹿みたいに愛されてるな、と実感した。


後日、大量のマシュマロをプレゼントされたが、ギモーヴだって。と説明してもどっちも一緒だ、と口に押し込まれた。


まぁ、いっか。







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