バベル | ナノ

黄瀬  




黄色い悲鳴、群がる女の中心にそいつはいた。
「キセキの世代、黄瀬涼太…!」
驚きの声に、改めて人垣の方を見る。すらりとバランスのとれた長身を見せびらかすように舞台から降りたそいつは、黒子の元まで行くと片手を上げて微笑んだ。
「ひ±U、ζ,〃レ)、<З⊇ッち」
―――!!?
瞬間、あたりにはクエスチョンマークが飛び散った。
「⊃(≠〃σぁレヽτ世レヽレ)ωッτ(≠レヽτ、<З⊇ッちヵゞレ£レヽッT=σぉм○レヽT=〃UT=ωτ〃ぁレヽ±⊃レニ(≠T=ω£∋」
ざわつく人々を気にも留めず、黄瀬はペラペラと理解不能な言葉を話す。
どことなく日本語のようだけど絶対的に日本語ではない、それは。
「ギャル語です」
種明かしをしてくれたのは黒子だった。
「これが以前話したキセキの世代が受けた天罰です。黄瀬くんは、ギャル語しか喋ることができません」
「……っ!」
確かに考えが甘かったと、火神は思い知った。気持ちが伝わらないなんてレベルではない。異次元だ。こいつは宇宙人か。
「⊇ωTょ`⊂⊇U〃ゃT=ヵゝらσм○ち<〃±яёッ£∋★ゃッレ£o<З⊇ッち<T=〃±レヽ」
黄瀬は黒子に話しかけるのをやめ、バスケ部のメンバーたちになにかを言った。
―――分からない。
なにかをお願いされたような気がする。が、全然全く分からない。
「だが断る」
凛とした声が体育館のざわめきを止める。黒子は黄瀬を見つめて、はっきりと返答をした。
「お前…こいつの言葉が理解できるのか…?」
戦く火神に、黒子は頷いた。
「言語の難易度は、キセキの開花度合いによります。なので一番下っぱの彼は、一番難易度が低いです。ギャル語なんてある程度の法則さえ分かれば理解できます」
「±£ヵゞレ£<З⊇ッち!TょヵゝTょヵゝゎヵゝッτ<яёゑひ`⊂ヵゞレヽTょ<τ±ひ〃Uレヽω£∋→」
「知りませんよ。帰れ」
「黒子…」
会話できている。できているが、引っ掛かる。
「せっかく言葉が通じるのにお前なんか…扱いがおざなりじゃね?」
「…そうですね」
黒子はまとわりつこうとする黄瀬の手を払いのけて、火神と向き合った。
「こうなる前から黄瀬くんはチャラく、ウザく、周りをイライラさせる天才でした。そしてギャル語使いとなった今の彼は―――」
黒子は振り返り、面と向かって本人に言い放った。
「生理的に無理です」
「ひ`⊂〃レヽッ£→」
「黙れ。喋るな」
一刀両断にバッサバッサと切り捨てる黒子を見ながら、思う。
言語に関わらず天罰によって一番引き裂かれたのは、この二人なのだろう。


2013/1/4

「ギャル文字変換」
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