バベル | ナノ

黒子  




期待などしていなかった日本の学校で出会ったなんだか良く分からないやつは、全中3連覇を成し遂げた、キセキの世代の幻のシックスマンだった。
「そんな奴がなんで新設校になんかいんだよ。普通、他の奴らと同じ強豪校に行くんじゃねぇのか」
部活の帰り、夜道を行きながら火神が問うのに、黒子は前を向いたままで答えた。
「強豪校でなくてもバスケはできます。それに、他のキセキたちも全員別の学校に進学していますよ」
「そうなのか?なんでまた」
1人2人ならまだしも、全員が別となると明確な意図を感じる。
質問を重ねると、黒子は足を止めた。
「火神くんは、バベルの塔をご存知ですか?」
「…高すぎる塔を作ったら天罰がくだったってアレか?」
「はい」
硝子色の瞳は、真っ直ぐに火神を見上げる。
「大きな力を束ねることは、時に罪に等しい。だから僕らにも罰が当たったんです」
「なんかあったのか…?」
過去の痛みを思い返しているのか、黒子の表情に影が射す。
「全中を連覇した頃から僕らは…互いの言葉が理解できなくなってきました」
「…それは、思いが伝わらない的な?」
「いいえ」
そんな漠然としたものではないのだと、黒子はきっぱり否定する。
「文字通り、言葉が通じないんです」
「………」
意味が分からない。気持ちのままの顔をする火神に小さく笑って、黒子は背を向けた。
「…じきに分かります」


2013/12/22


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