高橋兄弟×中里の3Pエロ。
モブ間男が出てくるので注意。




ありえない出来事だと思った。
余りにも現実味がなくて、夢だとしてもこんなにも自分の想像力は豊かだったろうかと考えてしまうくらいだ。
思わず笑ってしまいそうだった。
あの高橋兄弟が揃って告白してくるとは、何なんだこの状況。
二人は真剣なんだそうだ。
抜け駆けされない為に二人で来たらしい。
告白の答えはいらないらしい。
ただ気持ちを知っていて欲しかっただけらしい。
意味が分からない。
笑ってしまいそうだったけど、笑わなかった。


それから特に彼らと接触することなく日々は過ぎて行って、あの日の事や彼らの事を思い出すことも無かったのだが、予想外の事が起きた。
「好きだ」
手をギュッと握られて、目をしっかりと合わせて言われた。
中里はまず、何を言っているんだろうこいつは、と思った。
最近仕事の関係で毎日のように顔を合わせ、お互いの上司のいないところでは軽く不満を言い合うくらいには仲が良くなっていた。
しかし、いくら個人的に良い人間だと分かって同じ歳の気軽さがあろうとも、違う会社、しかも規模からいって明らかに格上の会社の人間に中里は丁寧語を崩したことはない。
仕事上の摩擦を無くす為の親しさは良いが、それ以上踏み込む気は全くなかった。
何故ならこの男、優秀で悪い人間でないことは分かるが、自分の優秀さを鼻にかけるような言動を取る時があり、それが中里の気に障る。
もっと仲良く、仮に友達のようになっていたら、中里はこの男を一度は引っ叩いていただろう。
気取ってんじゃねえと。
そしてこの男が、そういった否定を受け入れられるような器ではないと見ていたので、中里は距離を取って接していた。
自分で把握して取った距離であったからか、峠の彼しかしらない人間からすると別人に見えるほど、男に対する中里は好青年だった。
そんな中里の態度を都合よく好意的に捉えた彼は中里も自分の事を好きだと確信しているらしい。
十人並みよりはよほど整った顔をしている男は好意を寄せられることが当たり前だと考えており、自分の虚栄心を満たしてくれるなら性別は気にしない性質だった。
むしろ同性の方が男の支配欲を刺激してより強く虚栄心を満たした。
中里は男のそんな性質まで見抜いていないが、自分が振られるとは思ってもいない顔を見ると苛立ちが湧いてきた。
中里は男に握られていた手を引き抜くと、拒絶を前面に出して言う。
「だからなんだ。付き合ってくれというならお断りだ」
今まで溜まっていたのもあって強い口調になったが、何故が男は驚いた表情をした後、苦笑した。
「からかってるわけじゃない。俺は本気だよ」
何を言っているんだこいつは、と中里はまた思う。
意思の疎通が出来ない相手ではなかったのに、男が何を考えているのか全く分からなかった。
困惑に顰めた顔を男の手が撫で、中里はゾワッと鳥肌を立てて固まった。
顔のラインをなぞるように撫でた手が中里の顎を支える。
優しそうに見せかけた、だが確実に優越感が溢れている表情が近づいてきて、中里は男の顔を殴った。
顔を押さえてうずくまった男を見下ろして、中里はこれ以上付き合っていられないと帰った。
力加減をするなどできなかったが、突然だったし、近過ぎて無理な体制だったから拳の勢いはそんなになかったはずなので、男の大げさな態度にも苛立った。

翌日から男の勘違いも甚だしいアピールが始まった。
否、アピールではなく既に恋人かのように接してくる。
「昨日は突然で驚かせてごめん。殴られたところ痛いけど、俺怒ってないから」
「今度はちゃんと雰囲気の良い場所でしよう」
「どこか行きたい場所ある?」
中里が男と付き合う気がないと言っても、男は信じなかった。
「もしかして、今付き合ってる人がいるの?」
「いないなら何の問題もないだろ」
「やっぱり、俺と付き合えないなんて別に男がいるからだろ」
「早く別れなよ。好きじゃない人と一緒にいてもお互い辛いよ」
「毅の優しいところは好きだけど、相手の為にも正直になった方が良いよ」
「毅が言えないなら、俺がちゃんと相手の男に言ってあげる」
にこにこと笑っている男に中里は恐怖を感じるようになってきた。
どんなに言葉を尽くしても男には通じない。
全て男の都合の良いところだけ抜き取られて加工されて編集されているようだ。
精神的に追い詰められた中里は毎日峠に通った。
走れる時間がほんの少しでも良かったし、気の置けない仲間の馬鹿騒ぎを聞くのが癒しだったのだが、そろそろ周りの仲間達の心配があからさまになってきたので、追及される前に行くのを止めることにした。
涼介から電話があったのは中里が二日間峠に行かなかった夜だった。
話したいことがあって直接会えないかと言う涼介に、中里は初め断った。
弱っている今の自分で涼介に会いたくなかった。
今の自分では虚勢すら張れない。
しかし涼介に、仲間には心配を掛けさせたくなくて言えない事でも、滅多に会わない自分になら言えることがあるんじゃないかと理知的に話されると心が揺れた。
中里の意思を尊重して話したくないのならば聞かないが、必ず力になると優しい声で言われる。
押し付けがましいところはなく、中里を心配してくれていることが声から伝わる。
中里は疲れていた。本当に疲れていた。
涙が溢れて声に詰まる。
電話の向こうの涼介にも中里が泣いていることが伝わったらしく珍しい慌てた声が中里のいる場所を聞いてくる。
何とか家に居ることと住所を涼介に伝えると、まだ動けない涼介の代わりに啓介が来るという。
啓介は既に妙義に向かっていて、直ぐに中里のところに着くからと言われてしまった。
断る隙もなく通話が切られ、中里は啓介が来る前に泣き止もうと慌てる。
ティッシュでは追いつかないのでタオルに顔を埋めながら嗚咽が治まるのを待った。
だいぶ落ち着いてきたころ家のチャイムが鳴る。
ヒッと思わず声を洩らし、また涙が溢れてきたのでこんな姿で人前に出るのは嫌だと思うが、やってきたのが啓介ならば、出なければ余計に心配されるだろうと玄関に向かう。
レンズを覗いて啓介であることを確認するとドアを開けた。
声を出そうと口を開けば嗚咽になることが分かっていたので中里は無言で啓介を室内に招き入れる。
好きなところに座れとまた態度だけで示して中里も膝を立てて座った。
膝とタオルで顔を隠す中里の隣に啓介は座る。
「アニキもやること片付けて直ぐにくるから、アニキが来たら落ち着いて話せるように今のうちに泣いとけよ」
そう言って啓介は中里の背中を撫ぜた。
人を労わることに慣れていないのか、力加減の分かっていない、恐々とした撫で方だった。
それでも中里は嗚咽を我慢しきれなくなり泣いた。
時間にすれば長くないが、久々に泣いて頭が痛い。
目は半分も開いてないのではと感じるほど腫れぼったく熱を持っている。
まだ時折喉が痙攣するような感覚が残っているが、涙は止まった。
中里は顔を上げることは出来なかったが、ずっと背中を撫でてくれていた啓介に「ごめん」と呟いた。
聞き取った啓介は撫でるのを止めて背中を軽く叩いた。
「なに謝ってるんだよ。顔洗ってこい」
「ん」
顔を冷たい水で洗い、鏡で間抜けな自分の顔を確認した中里は濡らしたタオルで目を冷やしながら戻った。
一瞬戸惑ったが、さっきまで座っていた啓介の隣に座る。
「ありがとな。スッキリした」
「そっか」
それから二人はくっ付きそうなほど近くに座ったまま涼介が来るのをほとんど無言で待った。
やがて涼介がやってきて、中里は割と冷静に今までの事を二人に話した。
涼介は時々質問したが、啓介は一度も口を挿むことなく最後まで聞き「気持ち悪いやつだな」と吐き捨てる。
二人とも嫌悪を露わにしているのを見て、中里は安心した。
余りに自分が正しいという態度をとってくるあの男に、中里は自分の反応がおかしいのかと思ってしまうことすらあった。
「中里はその男をどうしてやりたい?社会的に消すのは時間が掛かってしまうが出来ないことはないぞ」
涼介が真面目な顔をして言い
「社会的に消えらた物理的に消えても誰にも迷惑かけないよな」
と啓介が続ける。
「いや、そんなことまでしたいとか考えたこともないから」
その発想に驚きながらも中里はそのまま話を進めそうな雰囲気の二人を止める。
「ただ俺の事諦めてくれれば良いんだよ」
「それだけで良いのか?」
「二度と中里の前に現れないように締めるとか」
「止めてくれ。今のところあいつがいないと仕事に支障をきたす」
チッと啓介が舌打ちするのを聞いて中里は溜息を吐いた。
「それにお前は大切な時期なんだから、暴力沙汰とか起こそうとするな」
答えに窮して中里を見つめる啓介に苦笑しながら「中里の言うとおりだな」と涼介も同意した。
「簡単で効果的な方法はあるが、中里の協力がいる。どうする?」
「俺の問題なんだからやるに決まってるだろ。どうすんだ?」
「俺を恋人として紹介すれば良い」
「は?」
中里は呆気にとられる。
「その男、顔は良いんだろ?」
「まあ、良い部類に入る」
「俺と比べては?」
「そりゃ涼介の方が……」
格好良い?綺麗?なんと言ったら良いのか迷って中里は言葉を途切れさせた。
とにかく涼介とは顔のレベルが違う。
涼介はふふっと笑った。
「そういう男は明らかに敵わないものと戦ったりしないよ。自分の自尊心を保つことしか考えてないからね」
「でも」
「これが一番簡単だぞ。何の労力も時間も掛からない」
「じゃあ―」
「もし疑われても、目の前でキスの一つでもしてやれば黙るだろ」
「はあ!?」
大きな声が出た。
しかも二つ。
しかし涼介は聞こえなかったかのように中里に手を伸ばした。
「不自然じゃないように、一度練習しておこうか?」
顔の輪郭を指でなぞられ、下った手が顎を支える。
あの男の行為を真似ていると中里は気付かず、またあの男の時とは違って嫌悪感ではなくただ恥ずかしかった。
一気に顔に血が上がる。
「アニキ!」
動けなかった中里に代わって啓介が涼介の腕を叩き落とした。
「中里の恋人役、忙しいアニキより俺がやるよ」
「これくらいの時間なら作れるさ。それに相手は自分をインテリぶらせたいようだから、お前より俺の方が効果があるだろう」
「正反対の俺の方が効果あるんじゃないの」
「――では、二人とも恋人という事にしようか」
ニコリと笑って涼介が中里を見た。
啓介は納得しきれていないようだが反論する気はないらしい。
展開についていけていなかった中里は涼介の笑顔に圧されてコクリと頷いた。


<END?>



え?3P?エロ?
今日はエイプリルフールですよ?
ごめんなさい。
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