「青峰くん」
桃井の呼び掛けに大きな背中は応えない。
傍らのベンチの上では桃井が渡した資料が、渡したままの姿で鎮座していた。
「きーちゃんのデータ、やっぱり見ないの…?」
「こんな情報いらねぇよ」
憤りを感じるくらい、青峰は強く拒否をする。
なんとなくそんな予感はしていた。
資料を集めて去ろうとする桃井の腕を、青峰が掴んだ。
「さつき」
桃井を見る青峰の目は、真剣そのものだった。
「あいつのスリーサイズの情報をくれ」
「早く試合行け」

1ファール


また遅刻か。大方の予想に反して、青峰は試合前に姿を現した。
しかも既にアップの済んだ状態で。
「もう、毎回心配させないでよ!」
「なに言ってんだ、黄瀬が相手だぜ。体が疼いて仕方ねぇよ」
褐色の肌の上を汗が滑る。
「性的な意味で」
「ちょっと体冷やしてこい」

2ファール


黄瀬の成長は桃井の予想すらも越えるくらいだった。
しっかり青峰に食らいついている。確かにあったはずの距離がほとんど感じられない。
傍らの青峰も、桃井と同じように海常のベンチを見ていた。正しくは、ベンチで大きく息をしている敵チームのエースを。
黄瀬は見違えるくらい、強くなった。
青峰はおもむろに口を開いた。
「綺麗になったな、黄瀬。ヤベェわ」
「青峰くんの頭がヤバいわ」

3ファール


「青峰くん」
桃井の呼び掛けに大きな背中はやっぱり応えない。
「このまま帰っちゃっていいの…?」
暗に黄瀬と話さなくて良いのかと匂わせる。
「さつき」
青峰の横顔は遠くを見つめていた。
「俺と黄瀬の幸せな未来の情報をくれ」
「知るか」

4ファール


fin 2012/11/15

世界観を守るためにずっと沈黙を守ってきましたがもう駄目です。限界です。
ホントはこんなんばっか書いてます。

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