「青峰を助けたいか?」
緑間の問いに、黄瀬は己の手を握り締めた。
返答なんて、決まりきっている。
「…俺は、なにをすれば良い?」
会話を先回りして自身を差し出せば、緑間は口角を上げた。
「先生と呼べ」
「………は?」
予想だにしなかった交換条件に、黄瀬はぽかんと口を開ける。しかし見つめ合う緑間の表情は真剣そのものだ。
黄瀬は躊躇いがちに小首を傾げ、望まれた言葉を口にした。
「……センセ?」
「もう一度」
間髪入れずに催促がある。
黄瀬に、否はなかった。
「センセー」
「もう一度」
「緑間センセー」
気が済むまで呼んでやれば、緑間は口元を押さえて顔を背けた。
見える部分は頑なな無表情を装ってはいるが、小刻みに震える手と、赤く染まった耳は隠しようもない。
黄瀬が若干冷めた目で緑間を見遣ると、彼は急ぎ足で自身のロッカー前に行った。
「もちろん、これで終わりではない」
ガタンと音を立ててロッカーを開けた緑間は、中から白い服を取り出した。
「次はこのナース服を着て言ってもらおうか」
「アホじゃないスか」

2013/6/10

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