院内の研究室で一人読書に没頭していた緑間は、控え目なノック音に顔を上げた。
「緑間先生…」
おずおずと開かれたドアからは当院の看板ナースが現れる。
薄いピンク色のミニ丈ナース服は彼の肢体を際立たせ、おそろしく艶っぽい。彼目当てにわざと骨折するという輩がいるという噂も、あながち間違いではないだろう。
「どうした、黄瀬」
本を閉じて尋ねてやれば、黄瀬はデスクの傍に寄り、熱っぽい目で見上げてきた。
「胸が苦しくて…先生に看てもらいたいんスけど…」
話すたびにちらつく舌の赤さがやけに目につく。緑間は椅子の背に凭れると、片腕を広げた。
「いいだろう。こっちに来い」
導かれるまま、黄瀬は向き合う形で緑間の膝の上に座る。二人分の体重に、椅子が小さな悲鳴をあげた。
「苦しいのはどの辺だ?」
緑間はゆるゆると黄瀬の胸を撫でる。黄瀬は俯き気味で頬を染めていたが、緑間の手がある一点を掠めると、ぴくんと身を跳ねさせた。
「ここか?」
「っぁ…そこ…!」
緑間は同じ箇所を何度も触診する。平らな胸の中で唯一、小さく膨らんだ部分を指の腹で擦っては、時々押し潰してみる。
「胸の音を聞いてみるか。前を開け」
「は、い…」
黄瀬はたどたどしい手付きでナース服のボタンを外す。シミ一つないまっさらな肌が晒される。緑間は白の中に咲いた薄桃色の突起に、聴診器を押し当てた。
「っひゃ…!」
金属の冷たさに黄瀬が体を震わせる。構わずに緑間は、小さな円を描くように聴診器を動かした。
「ん…っぁ…」
「随分と脈が早いな」
寂しげに立ち上がっているもう片方の突起には、空いている方の手を滑らせる。
「あ…っ」
「それに体も熱い。熱を計るか」
緑間が顔を上げる。黄瀬は意図を察して、口を開いて目を閉じた。
くちゅり。互いの舌が絡まり合う音がする。表皮以上に黄瀬の体内は熱く、まるで熟れているかのようだ。
「脈拍も体温も異常だ」
緑間は艶やかに濡れた唇を舐めて、囁く。
「すぐに体を開いて治療をする」
言いながら、しなやかな足を撫でる。薄いストッキングに包まれた足はさらさらとして心地好いけれど、今は邪魔以外の何でもなかった。
「下を脱いで、ここに座れ」
緑間は机の上を指し示す。ゆっくりと膝の上から降りた黄瀬は、迷うように俯いた視線を巡らすも、指示通り下着ごとストッキングを脱ぎ落とした。
机の上に腰を下ろした黄瀬は、ぴたりと膝を合わせて所在なげに足の先を触れ合わせる。
「もっと足を開かないと奥まで見えないのだよ」
緑間は足の間に手を差し込むと、柔肌を手のひらで感じながらじわじわとスカートの裾を押し上げた。
「…治して欲しいのだろう?」
病気や怪我を癒す器用な指先が、黄瀬の際どい部分を弄くる。先走りを溢しながら立ち上がるものに指を絡められると、黄瀬は堪えきれず背を反らした。
「っあぁ…!」
思わず緩んだ足を片手で押さえる。もう片方で濡れた性器を扱き上げれば、黄瀬は耐えきれないとばかりに口元に手を当てた。
「んっ…ぁ…ひ、あ…!」
手の中のものはびくびくと震え、限界を訴える。緑間は頃合いを見て、ぎりぎりのところで不意に手を離した。
「あ…」
あと少しを待ちわびていた黄瀬は、責めるようにこちらを見る。
「黄瀬、足を机の上に上げろ」
ここまで追い上げられていれば、断れるはずもない。黄瀬は苦しい息をしながら、小刻みに痙攣する足を机に上げた。
情欲の色に染まった汗ばんだ肌。はだけたナース服は二の腕までずり落ち、ピンク色の乳首が誘うように上を向いている。
机の上でM字に開かれた足は、包み隠さず最奥までを緑間に晒す。続きを懇願するように竿を伝う精液が、後孔までもを濡らしていた。
扇情的なんて言葉では足りないほどの光景に、知らず緑間の息もあがる。「この先」を渇望しているのは、黄瀬だけではないのだ。
「ゃあ…っ!」
後孔に指を差し入れる。黄瀬自身が流したもので濡れたそこは、まるで女のそれのように柔軟に異物を受け入れる。
「どこが悪いのか、隅々まで見てやるのだよ」
「ひゃあ…!あっ、あ…!」
指を増やしても乱暴に抜き差ししても、黄瀬はただ悦びの声をあげる。
「あ…もっと…!」
濡れた瞳は笑みの形で、緑間を誘惑した。
「もっと奥に、先生のが欲しい…」
白衣の天使とは良く言ったものだ。うちの看板ナースは、その天使のような姿で、悪魔のように男を喰らう。
誰も逆らう術などないのだ。緑間は苦しげに天を向いた己を、ひくつく穴に埋め込んだ。
「っああぁ…!」
甘く掠れる声を聞きながら遠慮なく腰を打ち付ける。望み通り奥を狙い打てば、黄瀬はぎゅう、と両腕で抱きついてきた。
「あっ、気持ちいぃ…!せんせ…せんせぇ…!」
泣きじゃくりながら舌足らずに呼ぶ様は愛らしいくらいなのに、下半身は別の生き物のように緑間を締め付ける。もっと多くの快楽を得ようと、腰を揺らして押し付ける。
「っ、この淫乱が」
「ひゃ…っああ!」
緑間は黄瀬の体を机の上に倒すと、思いきり中を突いた。高い声をあげて背を反らせる黄瀬を押さえつけて、抽挿を繰り返す。ぐちゃぐちゃに体液が混ざり合う音が、昂りを増加させた。
「黄瀬…っ」
切羽詰まった声で呼べば、黄瀬は薄く目を開く。艶やかな唇は舌舐めずりをするかのように、小さく吊り上がった。
「…出して、せんせい」
鼓膜から脳までが甘く痺れる。しなやかな足が誘うように絡まる。
「く…っ」
「ん、ああぁ―――っ!」
緑間は一際深くまで突き入れながら、黄瀬の中に白濁を吐き出した。


「…というのがナースプレイなのだよ」
「アンタ、一回看てもらった方がいいっスよ」


fin 2014/7/3

淫乱ナースでシリーズを書こうと思ったけれど、一作品目で力尽きた。

戻る