05 続・デビュー戦
ぐっぐっと手を握りしめて、黄瀬はこくりと頷いた。
「ちょっと平気になってきたかもしんないっス」
「そうか」
青峰は笑って黄瀬の頭をかき混ぜた。
「練習の通りにやれば大丈夫だ。―――いってこい」
「はいっス!」
コートへと入っていく背中に迷いはない。妬けてしまうほどの信頼関係に、黒子の声は僅かに尖った。
「青峰くんは意外と面倒見が良いですよね」
「そーか?」
「いつも遅くまで黄瀬くんの練習に付き合っているじゃないですか。一体なにを教えているんですか?」
黒子の隣に腰を下ろした青峰は、挑発的に口の端を上げた。
「まぁ、見てろよ」
試合開始のホイッスルが鳴る。ジャンパーが弾いたボールは、早速黄瀬の手に収まった。
すぐに止めに来た相手をさらりとかわす。大きくなっていくざわめきの中を、黄瀬はドリブルで切り込んでいく。
あっという間にゴール下まで来た、ここまでの動きはもうレギュラー陣ともさほど遜色はなかった。けれど、ゴールを狙うタイミングは、あまりにも未熟にみえた。
ノーフェイクで跳んだ黄瀬の前には長身のセンターが立ち塞がる。このシュートは止められる。大方の予想は、裏切られることになった。
黄瀬はボールを離さなかった。体が下降を始めても、体勢が崩れても、なお。
「―――いけ」
青峰の声が聞こえたかのように、同時に黄瀬がシュートを撃つ。ほとんど体を寝かせたままで放つそれは、まるで青峰を見ているかのようだ。
綺麗な弧を描いたボールはブロックの手を悠々と飛び越えて、ゴールに収まる。一拍の間の後、割れるような歓声があがった。
ぺたりと床に座り込んだまま、黄瀬は青峰に拳を掲げる。青峰はベンチから、同じ動きを返した。
「フォームレスシュートを教えていたんですか?」
「まぁな」
バスケ初心者になんてことを教えるのか。それをやってのけてしまう黄瀬も大概だが。
「ああやってシュートすると体勢崩すだろ?」
「そうですね」
リスタートした試合を見ながら青峰は言う。
「とりあえずそのまま押し倒し…」
「青峰ええぇ!!」


2014/3/12

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