03 脱ぐ
どうして彼はあんなにも無防備なのだろうか。
黒子は柔軟をしている教え子の所へ行くと、その前にしゃがみ込んだ。
「黄瀬くん、なんでもかんでも言われた通りに行動するだけじゃ駄目ですよ」
「ハイ!」
「じゃあ、服を脱いでください」
「ハイ!」
躊躇うことなく、黄瀬はばさりとシャツを脱ぎ捨てる。
黒子は痛む頭に手をやり、ため息を吐いた。
「…僕の話、聞いてました?」
「えっ、と…あの…っ」
自分が間違ったことをしたということは分かるらしい黄瀬は、考えて考えて、ズボンに手をやった。
「下も脱げということっスね!」
「違います」
どうしてすぐ脱ごうとするのか、むしろ脱ぎたいだけなのか。
黒子の頭は痛いを通り越して、爆発しそうだった。
「なんでそんなにも脱ぎっぷりが良いんですかね…」
「青峰っちといると良く脱がされるから、慣れてきちゃったっス」
ふわふわと笑って黄瀬は言う。
黒子は無言で立ち上がった。


「だって、服は邪魔だろ?」
問い詰める黒子に、青峰はあっさりとそう返した。
「…潔すぎて、逆に格好良いような気がしてきました」
「あと、黄瀬の乳首が可愛いから」
「やっぱりただの変態でした。お願いだから早く捕まってください」
むやみやたらに人を信じてしまう黄瀬にも責任はある。だけど誰が一番悪いかと聞かれたら、間違いなく目の前のこいつだった。
「君がそんなんだから、黄瀬くんの脱ぎっぷりがあんなにも良くなってしまうんですよ」
「そうなんだよなー…」
青峰はしみじみと肯定し、腕を組んだ。
「あいつの脱ぎっぷりには恥じらいがない」
「そんなことは言ってません」
しかし相当都合よくできているらしい青峰の耳は、黒子の言葉など聞いてはいなかった。
「サンキュー、テツ。おかげで大事なことに気付いたわ」
笑顔だけは爽やかに去っていく青峰を、黒子は茫然と見送った。


「テツ!」
後日の部活中。呼ばれた黒子は青峰の元に赴いた。
「…なんですか?」
「ちょっと見ててくれ。―――黄瀬」
指示の代わりに名前を呼ばれ、傍らの黄瀬は躊躇いながら己の服に手をかけた。
頬を染めて少しずつ肌を晒していく様は、「恥じらい」そのものだ。
「なにさせてんですか、青峰くん。黄瀬くんも、わざわざ付き合わなくて良いんですよ」
「…でも…服を脱ぐ度に青峰っちがあちこちいじくり回してくるから、俺…恥ずかしくて…」
「青峰えぇぇ!」


2013/9/9

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