一般市民が旅に同行する意義を考察した結果 01(ノクプロ·イグプロ)

パーティーメンバーの役割について考察しました。
グラディオ→盾
イグニス→世話役
じゃあプロンプトは?
プロンプトの役割について考えた結果がこれです。

ノクトとイグニスが人でなしです。
がっつり性描写があります。
なにを見ても平気な寛大な方だけ、先にお進みください。







Final Stage。画面に表示された文字に、俺とノクトは無言で頷きあった。
ノクトがゲームを購入して約一ヶ月。放課後はほとんど毎日、土日も多くの時間を費やしたこの大作RPGもようやく終わりが見えてきた。
「あとちょっとだね」
「おう」
最終面ともなればダンジョンは複雑で敵は手強い。それでもプレイ時間80を越えたノクトの片手剣キャラは見惚れるほど鮮やかにモンスターを地に沈めていく。俺もまた的確なタイミングで魔法を放っては、勝利に貢献した。
「いよいよか」
ラスボスの部屋の前で、俺とノクトはもう一度見つめ合う。
共に死線を潜り抜けてきた二人の間には強い信頼と固い絆がある、ような気がする。
「行こう」
俺とノクトは二人並んで、最後の扉を開いた。
ラスボスはRPGの王道、巨大なドラゴンだ。羽を広げて威嚇してくるボスに怯むことなく、ノクトはマントを翻しながら駆け出した。
同時に俺は呪文の詠唱を始めて、ノクトの6連撃が終わるのと同時に発射の構えをとる。
「ノクト!」
名前を呼ぶ。戦友にはそれだけで十分だった。
ノクトが巻き添えを食らわないよう距離を取った後、間髪入れずに俺の魔法が炸裂する。
プレイ時間80オーバーは伊達じゃない。
「よし、いける。プロンプト!」
「分かってる!」
ノクトを回復した後、またすぐに攻撃準備に移る。ノクトが超必殺を使った後に俺が大魔法を叩き込む。それが俺たちの必勝法だ。
「いっけー!」
大技2連発に、画面の中では大爆発が起こる。右上のコンボカウンターはとんでもない勢いで上昇していって、202コンボという大台を叩き出す。
そしてドラゴンは、ぱたりと力なく倒れた。
「やっ、た…?」
「やった…!」
表示されたWINの文字に、俺とノクトは飛び上がって喜んだ。
「勝ったー!」
エンディングを前にコントローラーを投げ出した俺たちは、抱き合って互いを称え合う。
「すごいよ!もう駄目かと思った!やっぱりノクトは強いね!」
「いや、お前のおかげだろ。回復のタイミングとか、さすがだわ」
割とかなり涙脆い俺は、こんなんで感極まって涙が出そうになる。ごまかす為に目を閉じたら急に、背中にあるノクトの腕に意識が行った。
抱きしめられている。近すぎる互いの距離に気づいてしまえば、かぁっと身体が熱を帯びた。
「プロンプト?」
急に黙ってしまった俺を、ノクトが訝しげに呼ぶ。
「大丈夫か、お前。顔真っ赤だぞ」
そっとしておいて欲しいところをずけずけと指摘されて、俺は涙目でノクトの胸を押し返した。
「の、ノクトが思いっきりぎゅうぎゅうするから、苦しかったんだよ!」
「はぁ?お前だって思いっきり抱きついてきただろうが」
「ノクト」
軽い言い合いを、涼やかな声が止める。びくりと肩を震わせながら振り返った俺は、リビングの入り口に立つイグニスさんを見つけた。
いつ来たのか、全然気付かなかった。きっとゲームに集中し過ぎていたんだろう。
「取り込み中すまない。グラディオが話したがっている」
イグニスさんが差し出したスマホを受け取ったノクトは、電話をしながら寝室へと消えていく。図らずも抱擁から逃れられた俺は、まだ熱いままの頬を手で押さえた。
イグニスさんは不審に思っただろうか。どうか何も気づかないでと、心の中で両手を合わせる。
「プロンプト」
穏やかに名前を呼ばれる。それだけのことに過剰に反応してしまうのはきっと、後ろめたいことがあるからだった。
「っ、はい…」
動揺が出てしまわないよう、強く手を握り締める。
この気持ちに気付かれてはいけない。気付かれてしまったら、きっとーーー
「ちょうど良かった。君とは一度、ちゃんと話しておきたいと思っていたんだ」
ノクトと入れ替わるように、イグニスさんは俺の隣に座る。
「正直に答えて欲しい。君はーーー」
ドキドキと鼓動が加速を始める。真剣な眼差しに身が竦んで瞬きすら出来ない。
追い詰められた俺に、イグニスさんは言葉で止めを刺した。
「ノクトのことが好きなのか?」
ドン、と銃で撃たれたような衝撃がある。握り締めた手のひらに汗が滲む。
ごまかさなきゃ。うるさい心臓の音を聞きながら必死に考える。気付かれちゃいけない。気付かれたらきっとーーーノクトの傍にはいられなくなる。
「そん…」
「嘘はつかなくていい」薄っぺらい取り繕いは口に出す前に一蹴される。
「君の気持ちが聞きたい」
「………」
ことノクトに関しては鋭い以上の感覚を持つこの人に、俺なんかのごまかしが通用するはずもなかった。俺は早々に白旗をあげた。
「…ごめんなさい」
ノクトが好き。でもそれが許さないってことはちゃんと分かってる。だから本人にも誰にも、気持ちを伝えるつもりは無かった。
友達として近くにいられればいい。そんなささやかな願いも、もう叶わなくなるけれど。
唇を噛んで俯いた俺に、イグニスさんは穏やかなままで言った。
「謝ることはない」
断罪を待っていた俺は、予想外の言葉に顔を上げる。
「ノクトを好きになったのが君で良かった」
ぽん、と肩に手が置かれるのを、奇跡みたいに思った。ノクトに近付くなと、拒まれることを覚悟していた。好きでいていいと認めてもらえるなんて、想像もしていなかった。
「…はい…!」
どうしよう、嬉しい。ラスボスを倒した時よりも、ずっとずっと嬉しい。
「あれ?」
通話を終えたらしいノクトが寝室から出てきて首を傾げる。
「なんかお前、まだ顔赤くね?」
「〜なんでもない!」
また紅潮した頬を、今度は隠すことなく俺は笑った。
片想いでも報われなくても幸せな恋をしていると、確かにこの時は思っていたのだ。

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