アグレッシブ間接キス(ノクプロ)
ノクティスたちが夜営地にたどり着いた時にはもう、すっかり日は暮れてしまっていた。
「あーあ、今夜もキャンプかー…」
「文句言うな。休めるだけマシだろ」
「…そうね」
ノクティスもプロンプトも、声に覇気は無い。チョコボから地に降り立った身体は、そのまま地面にのめり込みそうなほど重かった。
「はー…」
疲れた。疲労のこもった息を吐くと、そんなノクティスを心配するかのように、チョコボが短く声をあげた。
「…大丈夫だ。ありがとな」
1日中戦っていた自分たちはもちろんだが、それに付き合って1日中走っていたチョコボたちも相当消耗しているだろう。
ぽんぽんと背中を撫でてやるノクティスの横で、プロンプトもまた盛大にチョコボを労っていた。
「今日も1日ありがとうねぇ」
チョコボの首に抱きついてお礼を言っている姿はなんとも微笑ましい。でもその次の行動は、笑って見ているなんて出来ないものだった。
プロンプトはチョコボのクチバシに、己の唇で触れたのだ。
「あ!」
「…、ビックリした!なに、ノクト?」
なに、とか言われても、考えるより先に声が出てしまっていたノクティスには、なにも言えることは無い。
「…なんでもない」
「いやいや、なんでもないのにあんな大声は出ないっしょ」
どう誤魔化すか。ノクティスが思考を巡らせていると、意外なところから助けがきた。
「プロンプト」
夕飯作りをしていたイグニスが、手伝って欲しいとプロンプトを呼ぶ。プロンプトはこちらを気にしつつも、素直に救援要請に従った。
そしてこの場には、ノクティスとチョコボだけが残される。
「………」
チョコボはくりっとした瞳でこちらを見つめる。ノクティスは無言で、そんなチョコボの手綱を掴んだ。
可愛い。だが、憎い。そして羨ましい。
プロンプトとつるむようになって約5年。未だ事故を装って触れることすら叶わない唇に、このチョコボはある意味マウストゥマウスで触れた。
そんなことを考えていると、目は自然とプロンプトがキスを贈った部分へといく。すると、悪魔が囁いた。
―――ここにキスすれば間接キスだ。
ノクティスはごくりと息を飲んだ。そして恐る恐るクチバシに顔を寄せる。
違う。これはチョコボを労う行為であって、断じてそういうアレでは無い。
ぐるぐると言い訳をしながらあと数センチという距離まで近づいたその瞬間―――チョコボがふるりと身を震わせた。「ックシ!」
チョコボが盛大なクシャミをする。そしてそのクチバシは、ざっくりと深くノクティスの額に突き刺さった。
「あああああ!」
「ノクト!?え?どうしたの、ノクト!?」
fin