LONG NOVEL

二人きり (35/46)

行きたくない行きたくない行きたくない。
会いづらい会いづらい顔合わせづらい・・・

なんでなんで寄りにもよってなんで今泉にばれちゃったの?
どうせばれるんなら小野田坂道にばれちゃうべきでしょ?

今まで押して登っていた表の坂道を立ち漕ぎしながらゆっくりと登っていく。
部室が近づくにつれ顔の眉間に皺が寄っていくのが鏡を見なくてもわかる。


「あの・・・」
「・・・」
「あの、おはようございます」
「・・・」
「苗字さん?あの・・」


MERIDAちゃんにキーを付けて顔を上げると小野田坂道がへらりとした顔を私に向けていた。


「あ、えっと・・おはよ;」
「おはよう苗字さん。今日はロードで来たんだね」
「う、うん、ロード・・」
「初めて見たけど綺麗な色だね」
「そう・・・かな?」


・・・・き、気まずい;
気まずいし、ここら一帯空気が重い;

ていうか、私今まで小野田坂道とまともに話したことなかった;

小野田坂道はいつもの通学用のママチャリをいつもの定位置に止める。
自転車の後ろにはロードにも付いてる"王立軍"のステッカー。

かごから取り出した通学鞄にはマニュマニュのぬいぐるみが付いている。


『今シーズンはどのアニメ観てる?』
『来月開催のアニフェスは行く予定してるの?』
『ラブ☆ヒメのDVD特典、豪華収納BOXらしいよね』


なんて軽く口に出せたらどんなにいいか。


二人きりの今最大のチャンスなのに、どうしても言葉に出せない。

勇気が出ない。


私と違って小野田坂道には、オタクを理解してくれてアキバや映画やイベントに付き合ってくれる友達がいるんだもん。


「あの苗字さん、ずっと気になってて聞けなかった事があるんだけど」


なになになに?!
昨日の事かなやっぱり;
今泉が絶対余計な事話したよね?

いや、もしかして湖鳥のステッカーの事かも。
勝手に人のボトルに勝手にステッカー貼るとか普通に考えたら気持ち悪いよね;


「こういう事女の子に聞くのって失礼な事かもしれないだけど、でもずっと気になってて、もしそうならそうだったらって一人で期待したりして・・・でも僕の勝手な思い込みかもしれないし苗字さんの気を悪くさせちゃうかもって思うとなかなか言い出しづらくて・・」


もごもごと聞き取りずらい小野田坂道の言葉にちょっとだけ期待して次の言葉を待った。









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