SHORT NOVEL

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「あれ〜?」
「なに?」
「押してきてくれたんだ、僕のコルナゴちゃん」
「だってあそこに置きっぱなしにしちゃ駄目な気したし」
「うん、ありがとー助かったよ〜」


元々ストレートな髪が雨の所為でより真っ直ぐになって水が滴ってる。


「これ」
「うん?」
「ブレザー、貸してくれなくてもタオル持ってたから平気だったんだけど」
「なんだぁそれならそうと早く言ってくれよー」
「あんたが勝手に被せて行ったんでしょ!//いいから早く拭きなさいよ、風邪引くよ;」
「ありがとう」
「ついでに拭いてあげれば?」
「?」
「"こるなごちゃん"。大事にしてるんでしょ?」


自分の体もちゃんと拭けてないのに"こるなごちゃん"の車体をタオルで拭きだす。

その姿を後ろで眺めながら少しだけ"こるなごちゃん"を羨ましく思った。

ほんとにほんとーにちょっとだけ。


「あれ?兄ちゃん」
「ん?定時」
「こんなとこでなにしてんの?なんかびしょ濡れだし」
「お前も居残ってたのか」
「うん、兄ちゃんも?」


杉元を「兄ちゃん」と呼んでるでっかい子、弟?もしかして。


「あ!もしかして兄ちゃんの彼女さんですか?うちの兄ちゃんがお世話になってます!初めまして、弟の定時です」
「Σえ?!は?;なんで彼女?彼女なわけないじゃん」
「そうなんですか?;」
「そうなんですかって・・なんで私が杉元の彼女なのよ!」


思わず叫んでしまった私の声に弟は引いたらしく、おどおどしながら杉元に目をやったけど杉元はこっちを見たまま何も答えない。


「先に教室行くよ。あとの荷物杉元持ってきて」
「うん」
「あとブレザー、濡れてるから椅子に掛けておいた方がいいでしょ?」
「あー、そうだね、そうしてもらえると助かるよ」


何となく居心地悪く、居づらくなったその場から私は慌てて離れた。




「兄ちゃん」
「ん?」
「兄ちゃんが好きな人ってあの人?」
「なんでわかった?」
「兄ちゃんがいつも話してくれてるままの人だね」
「だろう?ああ見えて苗字はすごく優しい子なんだよ、僕の前ではあんな感じだけどね」
「頑張れ、兄ちゃん」
「ああ。でも僕にはもう見えてるよ、幸せなゴールが」
「ホント?!兄ちゃんすごいね!」


なんて、私が去った後にこの兄弟がそんな事を語っていた事を私は知らない;
知りたくもない・・・
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