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「ちょっと大丈夫なの?かなり重いよ?」
「平気平気、天気やばそうだから早く戻ろう」
平気な顔して自転車に跨る杉元にちょっと驚いた。
確か去年はもっと細くて、ひょろとしてて、ちょっとぶつかっただけでよろけそうなイメージあったのに。
行きとは逆に私の前を杉元が走る。
パンパンに膨らんだリュックを追い掛けるようにペダルを漕ぐ。
「苗字〜」
「何?」
「降ってきちゃったよ、雨;」
漸く表門坂の麓まで来たはいいけど、学校に辿り着くにはこの坂を登らなきゃならないという試練が。
「このまま登って大丈夫かい?」
「無理、杉元先行って」
雨は降ってるけど、この程度ならこのままでも平気そう。
雨がどうのより、この坂を自転車を漕いで登るのは流石に私には無理だ。
先に行けと言ったはずなのに、自転車を押してる私の所まで杉元が戻ってきた。
「なにしてんのよ;杉元はこんな坂登れちゃうでしょ?濡れちゃうから先行きなよ」
「苗字を置いてけるわけないだろ」
「二人で濡れる事ないでしょ」
「自転車貸して」
可愛がってるという"こるなごちゃん"をガードレールに立て掛けたと思ったら、私の手からママチャリを奪い取った。
「なにすんのよ!」
「自転車借りるよ」
「え?どういう事?」
「僕が戻ってくるまでそれ着てていいからね」
自転車を奪い取るのと同時に、着ていたブレザーを私の頭に被せた。
「いいよ、後でジャージに着替えるし」
「苗字はゆっくり歩いて登ってきて」
そう言って私のママチャリに跨った杉元はぐんぐんと坂を登って行ってしまった。
「なにあいつ;なんであんなに普通に登って行けちゃうの;?リュック背負ったままだし、カゴに荷物入ってるのに」
頭に杉元が被せてくれたブレザーを被ったまま、雨の中に置き去りにされた"こるなごちゃん"に目を向けた。