SHORT NOVEL

ほったらかしにも程がある1(鳴子) (3/21)

わかってる、あんたが私より自転車に夢中だって事は。

私は自転車に乗ってる鳴子が好きだし、自転車に嫉妬するなんてアホらしいし。

練習やら大会やら合宿に忙しいのはわかるけど、ほったらかしにするにも限度があるでしょ?


『また部活?』
『そやねん、もうすぐ大会やし俺だけ休むなんて事許されへんねん』
『わかった』
『ええんか?観たい映画ある言うてたやろ?』
『練習あるんじゃ仕方ないし』
『んーほんまに?そだ、他に誰か誘って行ったらええやん』
『いいよ、行かなくても。そこまで観たいわけじゃないし』
『ワイの事なら気にせんでええ。誰か誘いたい奴(女子限定な)おるなら行って来てええで』
『誰でも?』
『今度会うた時、映画の内容聞かせてもらうわ。今度言うてもいつデート出来るかわからへんけど』


「鳴子の事好き」って告白したら「マジか!ワイも好きやねん、苗字の事」って同時に告白されて付き合う事になったけど、鳴子にとってそんな大ごとじゃなかったんじゃないのかなって最近思う。

鳴子の"好き"は私の"好き"ほど大きくないんじゃないのかなって。

電話はマメにくれるけど、デートどころか学校から一緒に帰る事すらすれ違いの毎日。




「鳴子、いいのか?」
「なにが?」
「今日は自主練だろ?」
「だからそれがなんやねん」
「自主練だから用があるなら来なくて良かったんだ」
「なんやそれ。ははーんスカシ、ワイがいない間に」
「ちょっと小耳に挟んだんだが、うちのクラスの奴がお前の彼女に告白するとかなんとか」
「え?;」
「それ僕も聞いちゃった;結構大きな声で話してたし」
「それいつの話や?」
「えっと、一昨日かな?」
「なんでそん時教えてくれへんかったんや!」
「鳴子君と付き合ってるって聞いてたし、言わなくていいって苗字さんが;」
「小野田に当たるな。お前と彼女の問題だろ?」
「なんやそれ!手嶋さ〜ん、急用出来たんで先あがらせてもらいます!すまん小野田君、ちょい行ってくるわ!」




一人で映画観たけど、思ってたより面白くなかった。

やっぱり一人で観ても楽しくない、鳴子がいないと楽しくない。

鳴子に言われたように誰か誘おうかとも思ったけど、結局誰にも声を掛けなかった。

ランチでも食べて帰ろうかと可愛らしいカフェを覗くけど、楽しげにしている大勢の中で食べてもきっと美味しくない。

家に帰ろうと駅の方向に足を向けると、目の前に赤い自転車を押した見慣れたド派手な髪が立ちはだかった。


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