SHORT NOVEL

             2 (17/21)

「純太〜待ってよー!」
「なんでロードで来たんだよ;バスで来れば良かったろ?」
「だって下り坂だし」
「行きが下りなら帰りは登りだろ?」
「帰りの事なんか考えてなかったし」


青八木とは店の前で別れ、ヨロヨロと今にも止まりそうな速度で坂を登っている幼なじみを振り返る。

ハァハァと息を切らして俺に追いついた名前の顔を覗き込む。


「純太、いつもこんな坂登ってんの?苦しくないの?」
「苦しいに決まってるだろ」
「うわ〜私ロードレースとか絶対無理;パン食べてる方がいい」
「無理とか言う前にパン食い過ぎだって」
「だって美味しいんだもん」
「あ、あんまり田所さんの店行くなよ、仕事の邪魔になるだろ?」
「田所さんいつでも来ていいって言ってたよ」
「田所さんはそう言うに決まってるだろ、優しい人だから」
「来週も行こうと思ってたのに」
「やめろ;」


ペダルに足を付け、再び漕ぎ出す。


「坂嫌い〜TT」
「もうちょっとだから頑張れ」
「ひ〜ん;」


泣き言を言いつつもしっかり俺に着いてくる名前の姿に思わずニヤける。


「そういえば、近所に新しいカフェが出来たらしい」
「Σえ!?カフェ!!」
「パンケーキが美味いとかって聞いたな」
「パンケーキ!!!食べたい!!純太今から行こ!!!」


今までの踏み込みとは確実に違う勢いでぐんぐんと俺に近づいてくる。


「あれだけパン食ってたのにまだ食べんのか?」
「あれは主食、パンケーキはおやつ!」
「太っても知らないぞ」
「だから今運動してるじゃない」


間違っては無いけど、今のはさっきのパンの分じゃないのか?


「純太、お店どこ?こっちでいいの?」



名前は楽しそうにキョロキョロとカフェの在処を探してるけど、俺としては久しぶりの
名前と二人だけの時間に緊張してんだけど;


「純太ここ?」
「うん」
「お店超可愛い〜〜♪」
「混んでるな;並ぶけど名前時間大丈夫か?」
「全然大丈夫!混んでるって事は美味しいって事だよね♪それに純太と二人でゆっくり出来るの嬉しいし」
「え?」
「学校違うから全然会えないし、遊びに行っても純太部活の事で忙しそうだし、私の事忘れちゃうんじゃないかなって思ってた」
「何言ってんだよ、忘れるわけないだろ;」
「だって家にいる時も青八木君とばっかだしさ〜」


俺の勘違いじゃないなら、ずっと張ってきたこの境界線、突破していいって事か?


「名前」


顔を上げた名前の手を俺は少し震える手で握り締めた。
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