SHORT NOVEL

        3 (10/21)

「俺はな苗字」
「はい///」
「古くさい人間だから」
「はい」
「ああいう場所でのああいうやり取りが心底苦手なんだ。それに」
「・・・」
「それに、お前のああいう時の表情を周りには見せたくない」
「え、ああいう時の顔って・・・変な顔してました?;」
「違う、逆だ。幸せそうな笑顔だ」
「幸せそう?」
「これは俺の勝手な解釈かもしれんが、苗字の幸せそうな笑顔は俺をも幸せな気持ちにする。そんな姿を他人には、俺以外に見せたくは無い。しかし手嶋や青八木に向ける笑顔も幸せそうだった・・」


ずっとずっと憧れてて手に届くはずないと思っていた人が、今私を抱き締めてくれて、俺のものだと言ってくれてる。
これってもしかして夢なのかな?


「手嶋と青八木とは」
「友達です。先輩とは違います」
「・・・そうか、それなら安心し」
「もしかしてやきもち焼いてくれたんですか?」


先輩は抱き締めてた力を緩め、私の顔を覗き込む。


「当たり前だ、俺も普通に人を好きになるしやきもちも焼く。そして欲したりする気持ちも当然ある」
「Σえ?!」
「何故驚く。ずっと想ってた人と恋人になれたんだぞ、当然だろう」
「ずっと?そんなはずないですよね;ずっと先輩の側にいましたけど何の反応もしてくれませんでしたよね?」
「気付いてないのか、俺がずっとお前を見ていた事を」


驚いた。
だってこの2年間、ずっと側にいたのにそんな事全く思わなかったし、ずっと先輩は自転車しか見てないと思ってたから。
そう思い込んでたから。


「私が好きかと聞いてきたな?」
「////」
「俺達以外誰もいない所なら存分に言える。苗字好きだ」


ずっと欲しかった言葉だけど、金城先輩の眼力あるその瞳で言われたらパニくッてどうしていいかわからなくなる。


「どこが好きかとも聞いたな。その柔らかな綺麗な髪、日に焼けた肌の色、大きく見開いた瞳、柔らかそうな艶のある唇、そして抱き締めただけで壊れそうな華奢な」
「も、もういいです!////それ以上言わないでください///;」
「聞きたかったんじゃないのか?全部」
「いえ、・・もう充分です;///」
「どうして私と付き合ったかとも聞いたな」
「もう答えてくれなくて結構です;///」
「そうか?それならやめておこう。だがこれだけは俺から言わせてくれ」

「苗字、いや名前、愛してる」


そう言って私に初めて口づけてくれた金城先輩の腕の中で、情けなくも私は腰砕けた。
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