SHORT NOVEL

頑な男の恋愛事情1(金城) (8/21)

「先輩、私の事好きですか?」
「・・ああ、もちろん」
「どこが好きですか?」
「ひと言では言えない」
「あの、どうして私と付き合ってくれたんですか?」
「・・・そろそろ時間だ、行くぞ」


自分のと私の分のカップを掴み取り、私の事を振り向きもしないで店を出て行ってしまった。


引退と同時に私からの告白で金城先輩と付き合いだして半年。

大学進学の為に静岡に行ってしまった先輩とはなかなか会えない遠距離恋愛真っ最中。


『後輩達の様子を見に行くから飯でも食おう』


そう言われて久々に先輩に会えるってくるくる舞い上がったけど、私に会うのってもしかしてついでですか;?



土曜日の午前練習の時間に合わせて金城先輩が自転車部に顔を出す。


「お久しぶりです、金城さん」
「大学でも自転車乗ってはるんですよね?」
「そうだ、チームメイトに箱学の荒北がいる」
「そうなんですか!」
「すごいやないですか!最強チームになるんちゃいます?」


自転車部のマネージャーで彼女である私が側にいるにもかかわらず、私には見向きもしない。

わかってます、私より自転車が好きですもんね。

自転車を目の前にしたら私なんか眼中にないですよね。

久しぶりの可愛い後輩達ととことん盛り上がってください。


「苗字、いいのか?行かなくて。金城さんだぞ?」
「いいの、後で会うし」
「金城さんが来るってすごい喜んでたくせに」
「・・・」
「小野田達の所にお前も行って来いよ」
「いいってば、私は」
「純太構うな、苗字のそれはただのやきもちだ」


手嶋との会話に突然入ってきていらない事を口走った青八木の両ほっぺを力一杯引っ張る。


「いだいTT」
「無口くんの癖に生意気」
「苗字やめろ;金城さんが見てる;」


慌てて青八木から手を離して金城先輩の方を見る。
けど、すでに視線は小野田や鳴子達の方へ。


部活が終わり、先輩は自転車で、私はバスで駅へと向かう。

田所先輩との食事の時間まで少し時間があり、駅で待ち合わせてカフェへ入った。


「苗字、コーヒーでいいか?」
「あ、先輩、私買ってきます」
「何を言ってるんだ、座ってろ」
「え?はい・・」


受験を控えた大事な時期なのに、金城先輩は私の告白を受け入れてくれた。

私からの一方的な告白にどうして先輩が受け入れてくれたのかよくわからない。

告白する前から出来る限りのアピールはしてきたけど、先輩は全く動じず、後輩の一人としてしか見てくれてなかったはずなのに。
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