R-18


俺はあいつが嫌いだ。


中学3年の夏休み前の学期末テストで俺は32点を取った。高校受験を控えた大事な夏休みの前にこの点数を取ったことにお袋は鬼のように怒り、有無を言わさず家庭教師の予約をし出した。俺も志望する高校があったから家庭教師が来ることに大して不満は抱かず、ごく自然に受け入れた。

でもこれは夏休み以前の話。

そして今は夏休み真っ只中、俺は後悔している。テスト前に勉強しなかったことに。お袋が家庭教師を頼む時に止めなかったことに。

それともうひとつ、





「い、ァ…いざ、や…っ」
「シズちゃん駄目でしょー。ちゃんと先生って言わなくちゃ」

誰が先生なんて言うものか。臨也が家庭教師として初めて家に来た日、俺は襲われた。授業なんてそっちのけで部屋に入ってくるなり俺を押し倒しやがった。信じられない。それからほぼ毎日こうして俺達はがんがんにクーラーがついた部屋の中で行為を繰り返してる。正確には俺は毎日臨也に襲われている、と言いたい。

「このッ、強姦魔…ッ!」
「はは、こんなに喜んでいるくせに何言ってるの」

やわやわと包みこむように臨也の手が動き、自分のモノからぐちゃぐちゃと聞きたくもない音が部屋に響き渡る。

「やーらし、こんな音出しちゃって」

ほら、先走りすごいよ?だなんて聞きたくもないことを喋り続ける。臨也の指が穴の周りを撫でた途端、俺の腰は大袈裟な程跳ねた。

「ひぁッ…!ァ、アァ」

堪えようとしたけれど口から漏れるのは自分ではないような甘い声ばかり。こんな声を聞いて臨也は何を思うだろう。そんなことを考える暇も無しに、ゆっくりと臨也の指が穴の中へ入り込んできた。

自分達は生徒と先生。こんなことするなんてあり得ないはずなのに一体何をしているんだろう。ましてや男同士。獣以下の行為に自然と自嘲ぎみの笑みが漏れた。

「なーに笑ってるの、そんなに俺に抱かれるの嬉しい?」
「はっ…バカか」
「………」

臨也を纏う空気が変わった。あ、失敗したなと思うと同時に尻にぴたりとあてられた硬くて熱いもの。俺の身体は何を期待してるのか震えた。

「まだ早いけど挿れるね。俺さぁ、やっぱりシズちゃんだけは、」
「ひぁ…アァ、ア…」

ぐちゅ、という音と共に穴の中に入ってきたのは俺が待ち望んでいたモノ。


「 だいきらい 」


臨也が何か言った気がするけれど、もう俺の耳には何も入ってこなかった。一定のリズムでぐちゃぐちゃと中を掻き回されて、口から漏れる喘ぎ声を止めることは出来なかった。

「、ふぁ…はっ、アァ」
「でもこういう事をしてる時のシズちゃんはえろくてだいすき」
「ん、はッ…ァ、んんッ」

ギシギシと揺れるパイプベッドがこの行為の厭らしさを助長する。閉めきった窓の外からは子供達の遊び回る元気な声が聞こえてきた。臨也の耳にも聞こえたらしい。口元を歪ませて顔を近くに寄せてきた。臨也の胸板と俺の胸板がぴったりとくっついた。右から伝わる心臓の鼓動。臨也の舌が伸びてきて首を舐められた。そんな事にすらぞくぞくと感じてしまう俺の身体はおかしくなってしまったのかもしれない。ふいに臨也が俺を覗きこんできて俺達の唇が重なった。

「ふ、ぅん…んん、」

もうどうにでもなれ。ぐちゃぐちゃのどろどろになって溶けてしまいたい。身体の奥深くで臨也のもう一つの鼓動を感じながら、知らぬ間にこの最低最悪の家庭教師に惹かれていることに激しく嫌悪した。





「…最悪」
「え?嫌だったの?あんなに喘いでたのに」
「なッ…!!」
「それにしてもシズちゃんの中、やーらかくてあったかくて最高だよ」
「う、うううるせえ!!それより勉強を教えろよ!まともに勉強教えてくれたことないだろ!」
「いつも勉強教えてるじゃん」
「は、…?」
「ほけんのべんきょー」
「い〜ざ〜や〜!!」

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