「この職業に就いてるとさぁ、いろんな人間を演じることになるじゃない?例えば、世界に名を轟かせる殺人鬼の役だったり、一番最初に死んでしまうような脇役だったり。そうやって様々な人間を演じることが出来るこの仕事が、俺は結構好きなんだ。だって俺は人間を愛してるからね。」

「……臨也くんよぉ、御託はいいからさっさと台本覚える作業に戻ってくんねぇかなァ?」


俺とシズちゃんは、芸能界でも有名な名俳優だった。

俺はどんな役だろうとその役になりきる……まあ、いわゆるカメレオン俳優というやつだ。悪役もヒーローも女役もオカマだって全て完璧に演じてみせた。
一方、シズちゃんは演じることが出来る役柄は限られていたものの、スタントマンなしでのバトルシーンや大爆発からの脱出シーンなど、体を張る演技は素晴らしかった。

しかし俺たちは仲が悪い。それなのに監督共は俺たちが共演すると売れるだ何だと騒ぎ立て、悲しくも俺はシズちゃんと組まされることが多くなってしまった。

ある時は俺が有名な大怪盗で、シズちゃんがその怪盗を追う名探偵。またある時は俺が悪の帝王でシズちゃんは世界を救う王子様。……そう、シズちゃんと組まされると俺は毎回悪役だった。だからシズちゃんと組むの嫌なんだよ。収録終わった瞬間喧嘩売ってくるしね。

「だからさ、今回の仕事もシズちゃんと一緒って聞いた時に嫌な予感はしてたんだ。」

「……うっせぇんだよ!いいからさっさと台本読め!」

何で俺が、主役であるシズちゃんの相棒役を任されたんだか!

「いつもみたいにさ、俺が悪役でシズちゃんがヒーロー役の方がまだ共演し易いよ。君と共闘なんて、ああ……仕事だとしても吐き気がする。」

「……んなに嫌なら断れば良かっただろうがよぉ、いーざぁーやーくーん?」

彼は眉間に皺を寄せながら、拗ねたような顔で言った。……断ったら断ったで怒るくせに。シズちゃんって本当にツンデレだよね。


「やだなあ。シズちゃんみたいな乱暴化け物俳優、共演してくれる人なんて俺くらいしかいないでしょ?」

「んだとっ!?」

「ほーら、そうやってすぐ怒る。…俺もうセリフ覚えたし、一度通してみようよ。」



俺はシズちゃんと共演するのが嫌いだ。けれど、シズちゃんが俺以外の人間と組むのはもっと嫌いなの。……ね?分かるでしょ。

俺は君の前では「平和島静雄が嫌いな折原臨也」を演じているんだよ。

(君を好きだなんて、認めたくないし気づかれたくもないから。)

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