1:海の彼方より

混沌ばかりのこの世界。それでも人は生きていた。
時は戦争時代。もはや何のために戦っているのか分からない。それでも人は争い、憎みあった。
「きっと、私たちが生まれてきた理由がないのと同じように、この戦争にも理由なんて存在しない」
理不尽な世界に絶望した者は、そう呟いては、既に枯れ果ててしまった眼から涙を流そうとしたが、叶うこともなかった。
しかし、これは、ほんの昔のことである。今は光に満ちあふれたこの世界だが、「真実の書」である以上、私に嘘をつくことは不可能であるが故に、このような人の闇を写し取らなければならないときもある。だが、これを起こしたのは、私でもないし、私を生み出した者、つまり「歴史」でもない。欲望に駆られた、貴方たち「人」なのである。



パタン、と音を立てて本を閉じた。
思わず、ため息が漏れてしまう。
「黒の歴史」との戦いが終わり、「真実の書」が本来の姿を取り戻した後、人々の曖昧の境界は取り払われた。
だが、これで良かったのか、と疑いを隠せずにもいる。聞く話によると、能力の差やそれぞれの考え方が問題となり、地上人と古代人(天使や悪魔)の間でも境界が出来上がってしまったそうだ。やはり、元々馴染み合えない存在だったのか。だが、こうなることならいっそ…
「…お前は、人に知られずとも、平和であればそれで良いと考えるのか?」
とっさに振り向く。帽子の横につけたリボンが綺麗な弧を描いた。
「ビルド。いえ、インディスト。では、貴方はどうお考えですか?」
少し反抗的な態度で言ってみる。インディストは少し頭を横に向けた。
「畏まるな、ポルノ。いや、今はユノか。俺の考えは…そうだな、曖昧の境界があった頃の世界は、非常に不安定だった。ほんの少しの衝撃でも、すぐに崩れ去ってしまうほどにな。つまり、『黒の歴史』が襲撃する前に俺たちが止めることができなければ、おそらく世界は一瞬にして消えていただろう。あと、このような世界のメカニズムを作って、何処かに消えてしまったかつての神も、身勝手というものだ」
彼は嘘が下手だ。嘘の狭間で生きているような者からすれば、彼の嘘など簡単に見抜ける。
「気を使わなくていいよ。本当は英雄のしたことが間違いだって言いたいんでしょ?」
あの人を侮辱するような奴は、誰だって許さない。例え、相手が武神であろうとも。
「『英雄』などという言葉を使うな。それこそ、あいつに対しての侮辱だ。それに、俺はただ…」
インディストは言葉を途中で切り、体を傾けた。
何故って、一本の槍が体に突き刺さるところだったから。
ボクはもう、ロキア族のユノなんかじゃない。
化神、ポルノだ。
「冷静になれ。まず、俺に武器を向けるな。俺に対して武器は通じんぞ」
彼は右目を閉じているため、こちらから見て左側は死角が多い。だが、完全に避けていた。それも、紙一重で。
「キミはあの人が命懸けでしたことすら、否定するの?あの人はただ…」
「そういうことじゃない。先も言っただろう、俺なりの考えだと。勿論、あいつのやったことは人を繋げ、最終的には平和な世を作り出した。だが…人はまた、離れ離れになろうとしている。そして、今度はかつての神も、あいつもいない。今考えるべきは、昔のことに囚われることではなく、今までとは全く違うこの状況をどうやって乗り越えて行くかが問題だ。これに関しては、かつての神もあいつもない」
ふっと槍を下ろした。
いてもたってもいられないような、息苦しい感覚が襲ってきた。
僕は…僕はどこかで、自分の責任から逃れたかった。
きっと、こんな世界になったのは、あの人のせいだと思ってしまっていたのは彼ではない。…その考えを先に口に出した僕の方だ。
「…ごめん。ボク、自分が無力で何も出来なくて、焦ってた…こういうときに、あの人がいればって、そう思ってたんだ」
涙が出そうになるが、堪える。焦るあまり、味方を攻撃しようとした自分が許せなかった。
「別にいい。お前の気持ちもわからなくはない。それに…俺も、少し願っていたのかもしれないな」
彼にしては随分と弱気な発言で、会話は途切れた。
ボクらがあの人の話をする度、思い出すのはあの笑顔と、温かい眼差しだ。
なのに、あの人のことを思うと、心が締め付けられるように苦しく、そして悲しくなる。それはきっと、彼も同じ。
その感情は多分、大切だったはずのあの人の名前を未だに思い出せずにいるせいで湧き出てくるもので、これの原因はおそらく、この世界で最後に残された、神様のいたずら。



誰が読書になんか付き合うか、馬鹿馬鹿しい。
そう言って飛び出した先には、海があった。そして、気づけば俺は浜辺に立っていて、漣の間に煌く光を眺めていた。
こんな行動は、全くもって俺らしくない。だが、どうしてか光から目を離せずにいた。
Sea。「海」という意味を持つその言葉は、俺の名前の由来でもある。どこかで聞いたことのある話だが、いつ、誰から聞いたのかは覚えていない。
浜に落ちている石を拾って、海に投げた。円盤型の石は、ぶれることなく海面を打つ。1回、2回、3回…最後に「トプンッ」と音を立てて、漣に揉まれた石は消えてしまった。
現在はここ、ウォーター・パークに滞在し、ユノの読書が終わるまで、ここからは出ないという約束をしていた。
無論、俺は読書に付き合うつもりなどさらさらなかったので、こうして浜に来ては一人でぼんやりとし、街の中を散策しては、ユノからもらった金平糖をぽりぽりとかじっていた。
要は、とても暇なのである。ずっと旅をして、波乱万丈な日々を過ごしていた俺にとっては、今はものすごく退屈だ。小さな頃は集落で生活していたから、狩りや集落から抜け出そうとして忙しかったが、今はする必要がない。
これが、平和というものなのか。
まったくもって危機感がない。そして、面白くない。
…平和なんか糞くらえ。ていうかまず、今の状況が平和というのなら、間違っている。少なくとも、俺の気分が平和じゃない。
だんだんとムカムカしてきて、このまま海に飛び込んでやろうかと、一瞬顔を上げた。
そのとき遠くに見えた何かを捉えて、俺は前傾姿勢のまま止まった。
「なんだあれ…?」
漁に使うボートにしては、色が薄い。それに、ボートよりもっと大きい。
謎の海上物体の上では、何かが動いている。明らかにこちらに向かってきているわけだが、その間に、そこからざわめきが聞こえてきた。
「人…?なんであんなものに乗ってるんだ?」
興味をそそられた俺は、気がつけば脚を半分、海水の中に沈めていた。



さて、シーマが浜に来る少し前の話。船の上では人々が歓声を上げていた。
「前方に大陸が見えたぞ!!」
「あれこそ、旅人の伝説に記されていた『奇跡大陸・フォルテスナ』では…!」
騒がしいな、この連中は。そう思ったものの、僕自身ニヤニヤするのを避けられずにいた。
「船着場を探せ!どこかに港があるはずだ」
船の前方、僕は他の者より一段だけ高い場所にいる。僕のすぐそばで、同じ段の上にいる船長は僕に命令を下した。
「了解です、キャプテン」
すかさず僕は段差を降り、人ごみの間を縫って見張り台へと登った。
望遠鏡を取り出し、それを右目に当てる。そして大陸の手前にある浜を見渡すが、港はおろか、船を停める場所すら見当たらない。と思っていたら一瞬、木の橋が見えたが、あれはボートを留める場所だ。僕らの乗っているこの船には小さすぎる。
「何もありません…港も、何もかも」
どういうことだ?この大陸には非常なまでの違和感を覚える。そもそも、こんなにデカイ船を見つけて、サイレンすら鳴らしていないのだ。もしや、無人大陸に来てしまったのでは、という一抹の不安を感じたが、浜の奥に街が見えたのでそれはない…はず。
少し焦りながら浜を見渡していると、幸運なことに、人が浜に現れた。先ほどから色々とタイミングが良すぎる。今日はなんてツイている日なのだろう。
「ん…?前方の浜辺に人を発見!見た目は…」
ほっと安堵の息をつけたもつかの間、今度は説明に困った。
あれは…なんだ。獣の耳や尻尾がある点はまぁ、普通だ。僕らの中にもそのような者はいくらでもいる。だが、あの脇で浮いているものはなんだろう?多方の予想、翼のようだが、獣に翼など、聞いたことがない。稀に「鳥」型の者を見かけるが、彼らに獣の耳などない。更に拡大して見たところ、歳はまだ成人に達しているか否か程度。だが、初めてみる種族なので、実年齢には確証が持てない。頭には何枚かの帯を巻いており、装飾が丁寧に付けられている。
「い、今までにない組み合わせというか…とりあえず、我々とは明らかに違う人種です!」
「何?翼はあるか?」
「お、おそらく翼であろうものが浮いています…」
船長は僕の話を聞いて、大いに満足したようだ。確信がないままの発言など、しなければ良かった。間違っていたらどう保証すればよいのか。
「伝説によると、『フォルテスナ』には翼を持った『天使』と呼ばれる者たちがいるそうだ。ロル、その者はどこにいる?」
「はい、丁度船の進行路の先にいます。このまま進路を変えず、浜の手前で船を停めるのが無難かと」
僕が直感的に少年だと判断したその浜辺の者は、やっとこちらに気づいた。とても驚いた様子で、海の方へと入ってきた。
「あれがロルの言っていた者か…なるほど、確かに見たこともないような姿をしている。少し話を聞いてみるとするか」
「副船はどうしましょうか?」
「呼んでおけ。万が一のことがあっては困るからな」
船員の1人が通信機を取り出し、他の船との連絡を始めた。その間にも、船は意気揚々と目の前の大陸に向かって船体を滑らせていた。



やはり、その何かには、人が乗っていた。それも、かなりの大人数で、100人近くはいるだろうか。
驚きながら、そのボートもどきと言うべき何かに近づく。
すると、突然、上に乗っていた1人が、俺に話しかけてきた。
「おい、そこの君!少し聞きたいことがあるのだが、よろしいかな?」
いや、色々聞きたいのはこっちの方なのだが。
「ま、まぁ、別にいいけど…「そうか!では船から降りて話を聞こうじゃないか。他の者は船上で待機しておけ。副船が来たら、ロル、お前が連絡しろ」
なんか地味に上から目線だな、あいつ…変な形の帽子被ってるし。
そう思っている間に、そいつは目の前に跳び降りてきた。
「はじめまして、異国の、いや、異大陸というべきかな?…とにかく、我々とは別の文化を持つ者よ。私はハレスジア=ミストラジェル。面倒なのでハレスとでも呼んでいただいて結構。この船の船長を務めている者だ。以後、お見知りおき…」
「ちょ、ちょっと待て!意味の分からない単語をズラズラ並べられても、俺には理解できねえよ!!『いたいりく』とか『ふんか』とか『ふね』とか、一体何のことだ!??」
かなりデカイ声で喋ったので、息が上がっていた。正直、この、ハレスとかいう奴が「せんちょう」とかいうのにも、全く理解ができない。
「『ふんか』ではない、『文化(ぶんか)』だ。地味に見つけにくい間違いをしないでいただきたい。だが…驚いた。まさか『船』すら知らないとは…貿易はどうしているのだ?」
「貿易」…ああ、あれか。街同士で物物交換するやつか。それぐらいならわかる。
「…ってあんたら、貿易するためにわざわざこんなもの使ってどうするんだ!??」
「いや、逆に船を使わずに貿易する方法を教えていただきたいのだが…」
さっきから全くと言っていいほど話が噛み合っていない。
こういうとき、ユノとかがいればな…。
「シーマ!ここにいたんですね…これは一体…」
噂をすれば何とやら。ユノが俺の方へと駆け寄ってきた。
「おぉ!まだ物分りの良さそうな方が…!少し伺いたいことがあるのだが、よろしいかな?」
さっきからグサグサと心に突き刺さることを平気でいうコイツを、そろそろ海に沈めたくなってきた。
「え、誰ですかあなた…ていうかまず何で船がここに?」
「申し遅れました、私はハレスジア…」
「以下略。ハレスと呼んで欲しいらしい」
「ちょっとシーマ、失礼でしょう?」
そうはいうものの、明らかにハレスの方が失礼だろう。
「まぁ、名前なんてどうでもいいですよ!それと、お嬢様の後ろにいる方は、先ほどから話をされていないが…?」
ユノと俺が同時に振り返った。そこには、いつものようにスカーフで口を隠したままのビルドが。
「…俺は元から喋るのが好きではない。名前はビルド。ついでにいっておくが、そこの帽子をかぶっている方がユノ、獣の方がシーマだ」
ビルドは名前を呼ぶたびに、俺たちを指差して言った。
「なるほど…シーマ殿、ユノ殿、そしてビルド殿か…改めて、よろしく。さて、本題に入りたいのだが…」
ハレスが話し始めたところで、今度は別の奴が船から跳んで降りてきた。
「キャプテン、副船が来ました。こちらから信号を送りましょうか?」
「くそっ先ほどから全く話が進まん…ここに来るように伝えておけ。それと、何かあったらお前が指揮を取れ」
「了解しました」
手短に会話を済ませると、さっき降りてきたばかりの奴はまたジャンプして戻った。
「失礼。それで、話は飛ぶが、この大陸、もしくは国の『王』の元へ伺いたいのだが、案内してくれはしないでしょうか?」
俺とユノは顔を見合わせた。ユノはまだ理解しているようだが、俺には何がなんだかさっぱりだ。
「えっと、ハレスさん、ですよね?あの、ここには『国』という概念がないんです。そのため、『王』と呼ばれる存在は1人もいないんです」
何でこいつはここにないものについて、こうも簡単に答えを出せるのだろうか。とても気になる。
「なんと…!!だが、何故貴女はそのような言葉を知っているのかな?つまり…シーマ殿に聞いても、全く話が通じなかったのだが…」
案の定、ハレスが聞いてくれたが、ついでに俺が罵倒されたような…。
「えっとですね、それは昔、ここに『国』というシステムがあったからなんです。でも、それを知っている者は、今ではほとんどいません…私はたまたま、歴史に興味があったので、本を漁って見つけ出した知識っていうだけですよ」
何か色々と話がすり替えられている気もするが、そこは気にしないことにした。
「だが、先ほどの話を聞いていると、『船』も知っていたご様子だ。これは『文化』が作り出すものであって、『国』が作り出すものではないと存じ受けるが」
「ああ、それは異世界について調べていたときに見つけたものです。ここは空間が緩いのか、よく異世界からこちらへ飛ばされてくる者もいるため、そういう未来的道具についてなどの書物はそれなりにありますし、調べれば大体のことは分かりますよ。…ここにないものでも」
ハレスが「なるほど…」と呟いた。俺はもうユノの話を聞かないことにした。頭がショートしそうだ。
「ある程度のことならわかった。数々の質疑に応答していただき、感謝する。それで、この船の他に、『副船』という別の少し小さめの船が2隻ほど来る予定なのだが、ここには港がない。そこで、この浜に留めても問題ないだろうか?」
「ええ、ご自由に。観光客がいじっても平気ならの話ですけど」
「ありがとう。それと、『王』はいなくとも、『首領』となる者はいるだろう?その者に会いたいのだが…」
「あ…すみません、『首領』は会えないというか、会っても普通の人のフリをするというか…」
「そうなのか…いやはや、随分と変わった場所に来てしまったようだな。だが、『奇跡大陸・フォルテスナ』の伝説は、今ここに証明されたというものだ!!」
ハレスは目を輝かせながら、辺りを見回した。
それを聞いて、俺とユノはまたもや顔を見合わせた。
「なあ、『きせきたいりく』ってなんだ…?」
「さ、さぁ、それは私にも分からないです…ただ、私たちが見ていた『この世界』というものは、案外小さなものだったのかもしれませんね」
ユノはまた難しいことを言う。
「それって、どういう意味なんだ…?」
「つまり、この海の先には、私たちがまだ見たこともない場所…こことは違うけど、同じ世界に存在する、『別の大陸』があるのでしょうね」
何度言われても、俺にはさっぱり分からない。
「でも、驚きました…『真実の書』にも、『この世界』と書かれていますし、別大陸なんてないものだと思っていたのですが…」
「そうすると、今考えただけでも2つの仮説ができる」
ビルドが話に割り込んできた。
「仮説…?」
「あぁ。一つ目は、この海の先は別の世界と融合している。そうすれば『真実の書』に書き込まれていなくとも納得がいく。つまり、ハレスたちは『異世界から来た者』である説。二つ目は…可能性としては低いが、神すらも知らなかった地があった。『真実の書』は神が命を吹き込み、歴史を与えた。神が知らなければ『真実の書』も知らない。そうすると、ハレスたちは『同世界の者』となる説。俺は前者の方が有力だと思うのだが…後者も可能性としてはありえないこともない」
…もういい。知らん。2人で勝手にやってろ。俺には理解出来ない。
「聞いてみましょうか?その、神について…」
ユノが提案した。
「…相手も相手だ。些細なことでも聞いてみるほうが良いかもしれないな」
ビルドが頷いたような仕草を見せた。
「あの…ハレスさん。あなたたちは『神』について何か…」
「神?まさか…いや、なんでもない」
先ほどまで目を輝かせていたハレスとは打って変わって、今は動揺した様子を見せていた。
…ものすごく怪しい。
「あ、あの…私何か気に障ることを言いました?」
「い、いやいや!そんなことは微塵も…」
「嘘つけ。神って言った瞬間に真っ青になったじゃねえか」
ユノがまた「シーマ…!」と咎めるように言ってきたが、俺は無視した。さっきからずっと思っていた。コイツはどうにも気に食わない。見下してばかりで、何もしないような奴だ。臭いで分かる。
「…君たちは『神』を信仰しているのか?」
ハレスが囁くように聞いた。
「ここでは、『神』は最高地位とされ、人々から崇められています。『神』の容姿こそ知る者は少ないそうですが、存在は確認されています」
ユノが俺に非難の眼差しを浴びせながら言った。
「………など……文……」
ハレスが何か呟いたが、俺たちにはよく聞こえなかった。
「あの…ハレスさん…?」
「…!あぁ、すまない!ちょっとした独り言だ。君たちが気にすることはないよ」
ハレスは笑って誤魔化した。
「さて、来て早々すまないのだが、私の船員たちにこの大陸を案内してくれないか?非常に残念なことに、私は別件があって一度国に帰らなければならない。その間、この大陸について深く知るために、数名を置いていきたいと思っているのだが」
ハレスの言葉に、ユノはニッコリと笑って返した。
「むしろ大歓迎です。では、私たちが案内をしますね」



ハレスが船内に戻った数分後、そこから賑やかな声が漏れてきていた。大陸を回る話を聞いて船員たちが興奮したに違いない。
「案内をしつつ、あちらの話も聞いてみたいものですね…」
「なぁ、俺たちもいつかあっちに行けねえかな。ハレスは気に食わねえけど、ちょっと気になる」
シーマたちもワイワイと話し始めたが、その輪に入らず、一人思考を廻らせている者がいた。
ビルドは先ほど呟いたハレスの言葉が気がかりだった。
「『神』を信仰するなど、堕落した文化の証拠だ」
ビルドの黄色い瞳は、船窓に浮かぶハレスの影を睨んでいた。


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