心中遺書

 僕は君と死ぬことをずっと夢見ていた。だって僕は、君と生きている今を夢にしか思えなかったから。だから、いつか君が消えてしまうのではないかと、いつも恐れていた。きっと一緒に……そう、例えば抱き合い繋がったままで同時に心臓が止まったのなら、そこから二人の幸せへ進めるのだと、信じていた。どんなに求めてもひとつにはなれず、どんなに焦がれても不安は顔を出す。僕ら以外の誰かがいて、取り囲む全てがあるこの世界で、僕らが何の不幸も不満も感じずに生きていけるはずがないのだ。僕らが幸せになるためには、新しい、ここではない世界へ行く必要がある。例えそこが無であっても、例えそこに幸せがなかったとしても、そこ以外に別世界がないのであれば、そこへ進むしかないのだ。とめないでくれ、だから。僕は幸せになりたい。君と、幸せになりたい。そのために僕は、すべてを消さなければいけない。僕と君の周りの総てを、二人の周りから。それはとても簡単なこと。僕ら二人が、二人だけの世界を創り、そこへ行けばいいのだから。
 これで話はおしまい。だからさぁ、行こう。理由もわかった今、もう止まる必要なんてないだろう? この紙切れが他人の目に晒され、単なるゴミか、はたまたきちんとした遺書になるのか、僕にはわからない。ただ一つ言えるのは、その頃、僕らの周りには何もないということだけだ。


END



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