「心中したい」

ぽつり、あまねくんが呟いたその言葉が気になったのは、あまねくんの表情のせいだろう。
普段から明るくて、笑顔ばかり見ているせいか、あまねくんが憂鬱そうな顔をしていると、少し心配してしまう。

けれど、わたしにはその意味がわからない。

「心中って?」

「誰かと一緒に死ぬこと」

「……あまねくんは、死にたいの?」

「好きな子と一緒に死ねたら、俺は幸せ」

ずっとずっと、生きることに必死だった。死にたいだなんて思ったことも、もちろんない。
知ってる人が死ぬことだってもちろん辛くて、そして怖かった。

だけど、あまねくんみたいな人もいるんだ。

「普通、自分って一番大切じゃん。なのに、一緒に死んでくれるって、愛されてると思うんだよ」

「心中してくれると、あいされてるの?」

「少なくとも俺は愛してる。そりゃ、生きてた方がいいけどさ、死ぬときは普通一人だろ? そうやって別れるくらいなら、一緒に死ぬのもいいなって」

「そっか……」

「普通に生きてて死ぬことなんて滅多にねぇけどさ」

そうだね、って返したけれど、わたしとあまねくんたちの生きてる世界は違うんだなって、改めて思ってしまった。



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