ライムライト



真っ暗な世界の中、最後に残るのはそれだけだから。

果てしない暗闇の中でわたしが感じられるのは、それだけしかないから。

だから。

「どうしたの?」

貴方の声を聞くと落ち着くのは、そのせい。

「……っ、あの」

喋りたいことがあるわけじゃない。だけど、貴方をここに留めておくために、わたしは必死にそれをさがす。

「あのね、わたし昨日、アンリちゃんとベアちゃんと、遊園地にいったの。それで……」

「もう遅いから、その話は明日にしようか」

「えー? どうして? メルメリちゃんの話、すっごく面白いよ?」

「うん、だから明日の楽しみにしておきたいんだ」

「だけど、明日じゃ……」

それでも話そうとするわたしの口をキスで塞いで、おやすみ、と告げると、彼は目を閉じた。

静かに眠る彼を見ると、不安になる。あの闇のなかにいるのだと思うと、怖くて。

「ねぇ……」

返事をしない彼の唇に頬を寄せ、彼の呼吸を確かめる。

「本当に、寝ちゃったの……?」

ほどけていく手を握りしめても彼の手は握り返してくれなかった。繋がった手も、わたしを彼の夢の中までは連れていってくれない。

ため息をついて、わたしは外へと目を向ける。

星たちの頼りない光が照らす夜空は、窓枠の中にきっちりおさまっている。この窓から光が差し込んでくるまで、わたしは呼吸することさえままならない。

いつまでも世界が明るければいいのに。

太陽に包まれたあの真っ白な世界に溶けてしまいたい。そうすれば、貴方を照らす光の欠片になれる気がするから。

目も開けていられないくらいの目映い光に包まれて死ねたなら、わたしは安心して眠るこができるのに。

End


暗所恐怖症のメルメリちゃん。相手は左京みたいな感じの人。固定にするのもと思って貴方にしてみました。
インソムニアにしたかったけど、左京の話に使っちゃったからライムライト。まぶしすぎてなにもみえない。




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