厨二病と負け組
(雛元桃花)



「世界をまっぷたつに分けるとすんじゃん? どうまっぷたつかってぇと、ひと昔流行ったあの、勝ち組負け組ってやつ。そしたら絶対、どちらかに偏りが生まれるわけだ。今回の例えならば、負け組の方に偏る。だって勝負して勝ち負けを決めれば、負けの方が多いに決まってるし。大会でもそうだし。そんで偏りが大きい方が、一般的、よく使う言葉で言えば普通になるわけ」

って、自分の言葉がさも論理的に出来上がってるかのように自慢気に言う淳は厨二病っぽい。厨二病ってのはリョウが教えてくれたんだけど、こういう偏った理論をかっこよさと勘違いする人はそんな病気らしい。目の前にいる、淳みたいな。

「で、何が言いたいの」

「凡人の多くは負け組だってこと」

「あんた、高校生の分際でよく言うよね」

「天才は小さい頃から非凡な才能を見せてたんだぜ」

「ふぅん」

「って、浬さんが言ってた」

私の返事は、やっぱりふぅん、だけ。クラスで席が近くなって、授業間にたまに話をするけれど、こういう話題の時は、深く聞かないのがいい。だってどうせ、言うことは決まってるし。

「お前は負け組ってこと」

「やっぱり」

「だから勝ってる俺に従え」

「いやよ。しかも淳、別に勝ってないし」

「国体まで行って、学校でもこれだけモテてる俺がお前に負けてるわけないじゃん」

自分のことをそこまで真っ直ぐに褒められるなんてある意味すごいけれど、部活であれだけ弱い立場で、私しか虐められないくせに、よく言うわ。もちろん、口には出さないけど。部活の話は基本的に部外ではタブーになっている。暗黙の了解ってやつで。

「でも成績は私の方がいいじゃない」

「それは中学時代のことだろ」

「どうせ変わらないでしょ」

「お前、そんな小さな世界で物事見るなよ。学校なんてちっせぇだろ」

「真っ二つに分けるとか大きすぎるし」

ざわざわ煩い教室の中、私達の口論なんて消えてしまうくらいに些細なこと。そして日常的といえるくらい、いつものこと。
私もわざわざ声を荒げたりしないし、淳も態度は控えめだ。これでも一応、控えめなのだ。

「っつーわけで、英語の訳見せて」

は? 何今の伏線? 普通に言えばいいのに、なんでまず私を貶すのよ。意味わかんない。

「あと5分じゃん、早く!」

「負けとか言った相手にノート見せてもらうなんて恥ずかしくないの?」

「負け組は従え」

淳はまた、早く! と、私を急かした。

「淳って男尊女卑が半端ないよね」

「お前限定でな」

「嫌よ、そんな特別扱い」

「負け組は黙ってろ」

「その呼び方辞めて」

「早くノート見せて」

確かにその自己中な性格には負けるよね。


END



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