マニエリスムの指環

2010/12/08 23:07


来る日も来る日も指先が乾く程に頁をめくり、脳味噌の皺に刻み込まれるまで反芻し、そして構築を重ねている。近ごろは時間概念の発達なるものにも手を出しているせいか、24時間でひとまず区切られるその循環の力学にまんまと引きずられて、私はめぐる。

ある一日にどれほどの量をこなしても、生理的に訪れる睡眠欲と深夜0時の魔法によってその日には永遠にお別れを告げねばならぬ。そして新しい朝を知るたび、まっさらにリセットされた生活が否応なしにに立ち現れ、私たちは始めるのだ、24時間の生活を。さよならをした昨日がどんなに何事かに満ち溢れて生涯忘れ得ぬものになったとしても、それにはもう手を触れることさえ出来ないのだ。何故なら、今日はまだ何もしていないから。時間が量的に均質だという幻想(時間とて人間が定めたルールのもとにある)の強制力たるや、怠惰な空虚を許さぬらしい。

月曜日も火曜日も相当な時間を勉強に費やしたはずなのだけれども、夢から覚めて朝を迎えると焦燥感にも似た勉学意欲に駆り立てられ、冷たい床に足をつけて今日も身震いをしたのだった。



講義を終えてから、友人と卒論の題目届の用紙を受け取りに行った。そこにはアンケートが添付されており、卒業にあたってもっと勉強しておくべきだと感じている分野は?との問いに、何やら自らの空虚さをつつかれるような思いだった。しかし私は知っている、何事も終わりが近づくと後悔の念が湧き出てしまうものであること。ことさら、卒業という感傷を誘うひとつの終末は、連綿とした記憶のなかに色濃く滲み続ける。それが美しくあれ、汚点であれ。ただ美しい記憶なら幾らでも、多いほど素敵な気がしているから、私は悔いのない日々を過ごそうとしているのだと思う。



午後の紅茶のレモンティを使ったというパイを、ヨーグルトにくぐらせて食べながら、ベッドに寝転がりながら宇宙のウソとかいう本を読んでいた。川上未映子も言っているのだけれど(実はこの共通点が堪らなく嬉しい)、宇宙なり世界なりこの空間は入れ子構造なのだといつの間にか考えていて、それは今でも揺るぎない。例えばこのパイの層の隙間にだって銀河があるかもしれないし、私はそれをヨーグルトに浸して噛み砕いているのかもしれないのだ。この地球を内包した宇宙というのは、案外運よく滅亡を免れているだけなのだ。ヨーグルトの洪水と巨大な犬歯による破壊からの。

そういえば、コーヒーが温くなるのが早くなった。明日は氷点下だというから、いちばん上等なニットを出した。おやすみなさい。





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